
後にも先にも、金魚紳士以上に美しく言葉を落としていける場所は、もうないだろう。
ここにくると僕は唇を挿げ替えたように歌えました。
真珠が落ちるような音で、血肉がさけるような色で。
とにかく僕が僕でないような。
金魚紳士の水槽の水を替えるだけの、僕でないほかの誰かのような。
真緒という名前さえ忘れるような。
ここはそんな場所でした。
ダイヤモンドを研磨したあとに残る粉塵のような言葉を残したい。
美しいものの残りかすのような。
残りかすの切なさを、儚さを。
風が吹けば、消えてしまうようなものでよかったし、数だっていらないし、名前もいらなかった。
僕はここで4年近く生きてきました。
けれど水槽の水も替えられないような僕で御座い。
水を替えることがなかなか出来なくなって2年間。
もう少し、もう少し、とねばりました。
潮時でしょう。
金魚紳士は、濁った水で泳げるような生き物ではない。
今此処に、金魚紳士の解放を。
長い間お付き合いくださったお方々には、どうお礼申していいかわかりません。
僕はとても楽しかったです。
とてもとても楽しかったです。
ここは終わってしまうけれど、いつかまた、どこかで。
右手にくちづけ、左手に体温。
幕をひけば零れる涙も見えますまい!
ありがとうございました。
僕はどこでだって生きていける。
真緒 /bed_mao@yahoo.co.jp
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