追うさき


「・・・何だ」
「ン、あ、ええ?何でしょうかね」
「こっちの科白だ。じろじろ見るな」
「・・・・・・・。・・・嗚呼、アンタの顔があんまり間抜けでしたんで、つい」
「成程。・・・今すぐ出ていったらどうだ」
「厭ですよ」
「じゃあ精々殊勝に振る舞え!黙っているぐらいの事はしろ!」
「ハイハイ、判りましたよォ」
「全く・・・!」
「(・・・全く、そんなに入れ込んでるのかねェ、あたしとした事が)」


淀鴨





















冷えた蕾


「ああ、うん?」
「どうしたん、ですか」
「いや指がな。赤いなと」
「・・・ああ。雪、の中で。弾いてましたから、ギター」
「相変わらず素っ頓狂な趣味だな。指、死ぬぞ」
「死にますか?」
「真顔で聞くな。冗談だよ、・・・どれ」
「・・・・・・わ」
「冷えすぎだな、これは。暖めろ、マジで動かなくなるぞ、これ」
「・・・あ。・・・はい」
「まだ素っ頓狂な顔してるな。どうした」
「い。いえ。なんでも、・・・ないです」
「ヘェ、なら、いいけどな。ちゃんとしとけよ、冷えたのは好かねェしな」
「は、い。そうです、ね、」


スモーク&エッダ





















笑むひと


「あなたに会えて良かった」
「・・・ぼくに?」
「そう、あなたに」
「どうして」
「自分の汚い部分も良い部分も、知れたから。それは、あなたがいたおかげ」
「ふうん、そっか。ぼくも、君に会えてよかったよ」
「わたし?」
「うん」
「どうして?」
「そうやって笑うひとが、ぼくは大好きだから。その笑顔に、会えたから」


レオ&さなえ





















おセンス



「どう?」
「なにがァ?」
「おれ様のファッションセンス」
「ンー」
「んっ」
「やぁっぱ、ヒドいよネェ」
「だあっ、さんざん誉めそうな目ェしてそれかっ、ばかっ!」


サイバー&スマイル





















痴話喧嘩


「アー。面倒、ですなァ」
「何がだ?」
「いえねェ。・・・アンタがもう少し利巧だったら、と」
「・・・。喧嘩を売ってるのか、貴様」
「別にィ。何と無くそう思っただけですよォ。他意は御座いません」
「他意があった方が余程マシだ、馬鹿者!する事が無いのなら大人しく帰れ!」
「ハァー・・・、アンタも随分冷たく為ったモンですよ。
 出遭った頃はもう少し可愛げが有った、淋しいねェ」
「・・・下らんことで、私の手を煩わせるなと、言っているだろうが」
「唯の懐かしみですよ。全く・・・、少しは好きに喋らせ為さい」
「お前はっ・・・、じゃあ一体、私のどこが可愛くなくなったと言うんだ!」
「・・・・・・・・・は?」
「・・・あ。いや。・・・あれ、・・・? 私は何を言って、」
「アー。・・・嗚呼、嗚呼!成程成程!」
「な、なんだ。寄るな」
「成程、アンタはあたしに「可愛い」と想われたくって仕方が無い訳だ!」
「はっ・・・、なっ!ば、ば、な、馬鹿を言うな!」
「いやいや面目無い、アンタが其処まであたしの事を想って下さって居たとはねェ」
「黙れ!何をおかしなこと言ってるんだ、お前は!」
「いやァ学者様、申し訳有りませんでしたなァ。
 此れからはもっと丁寧に学者様の事を甚振って差し上げますから」
「ちょっと待てなんだその甚振るというのはお前、労わるの間違いだろういやそう言ってくれ!」
「好い気分ですなァ・・・手始めに一つ、愉しい事でも致しましょうかァ!」
「だ、か・・・ら、お前っ、近づくな寄るな、ギャアッ、触るな!」


淀鴨





















ぶんぶん


「旅行、だって?」
「うん。そう」
「どこまで?」
「ずーっと果てまで」
「・・・果てかァ。じゃあ宇宙だ?」
「うん。宇宙って言ってた!確かに」
「・・・・マジなんだ」
「マジだよー。あのばかがこんな楽しいことで嘘つくわけないじゃん」
「そっか。あんたはとっくに楽しみになってる、と」
「キミも案外まぬけちゃんだね、ミミくん。こんな素敵なこと、ほっとけないでしょ?」
「・・・まーね。なんだかんだで、あたしもはしゃぐのよ、最後は」
「そうそう。ほら、もうトランクも用意した。すぐにでも行けるよ、あたしたち」
「そーなのね。また一緒にいろんなもん、見るのね」
「んっ!精々騒ぎましょ、相棒っ」
「はいはい。よろしくね、相棒。」


ミミニャミ@11前





















音の花道


「別にー。あたし達ってあんがい、不自由だしさ」
「へえ、・・・歩さんがそんなこと言うだなんて、・・・意外だな」
「そっかな?結構あたし現実見てるよ。出来ることも出来ないこともね」
「それ、音楽のこと?・・・ですか」
「ん、それも、あるけど。でもそれは、出来ることだって思ってるよ、あたし」
「ゴールド金賞?」
「そっ。ジョニくんのベース入れるためなら、大会に直談判してもいいと思ってる」
「は!?な、なに言ってるんです、なんでそんなこと・・・!」
「だって。あたしはジョニくんのベースがあって初めて、自分のほんとの音が出せる気がするから。
 ・・・ほんとだよ。誰がなんて言おうとあたし達の吹奏楽にはね、ジョニくんが欠かせないんだよ」
「・・・あ。歩、さん」
「だから。不自由でも、あたしが出来ることは全部やっておきたいって思う」
「うん、確かに、・・・そうかも、しれない」
「そう。だから、やっぱジョニくんには本気で自分の腕に自信持ってほしいな。
 あたし、ジョニくんの鳴らす音、大好きだから」
「あ。・・・あ、ありがとう」
「うん。ギターだけじゃなくって、ジョニくんのこともね。あたし、好きだよ」
「・・・・・・、・・・・・・・え?」


ジョニーD×歩





















濡ねずみ



「・・・何ですか其れは」
「避雷針だ。お前につける。頭を出せ」
「下らん冗談を真顔で遣るのがアンタの仕事なのは知ってますが。
 あたしに面倒が掛かるのは御免蒙りたい処で、」
「黙れ。下らん冗談で無駄な雨宿りをしにくる馬鹿を丸焦げにしてやりたいだけだ」
「雨宿りねェ。実際斯うして降ってるんです、致し方無いでしょう」
「濡れて死ね」
「アンタも路連れにしてりますよォ?」
「煩い。・・・雷が鳴ったら面倒だろう」
「ハァ?意味不明ですな。脈絡が無いのはアンタの頭だけで充分なんですが」
「稲光は集中力が途切れる。雷鳴は煩い。・・・ええい面倒だ、お前以上に面倒なんだ雷は!」
「・・・嗚呼、成程。アンタは稲妻が嫌いな訳だ?」
「・・・・・・・・・・・違う」
「何ですか其のあからさまに永い沈黙はァ。
 厭なら厭と速く仰って下さいよ、知合いの雷神を直ぐ呼んだ物を。嗚呼勿体無い」
「だ、ま、れ!ああ全く、もうあんなに空が黒いじゃないか!早く帰れ!」
「アンタも天邪鬼が過ぎる、そんなに怖いなら此の胸に飛び込んで身体でも振るわしゃ好い物を。
 今日は雲も黒ずんで良い日和ですしなァ、特別に抱き締め返してやりますよ」
「・・・な、にを馬鹿なことを・・・、言ってるんだ貴様は!いいから早く・・・」
「嗚呼嗚呼、顔が茹蛸に成ってますよ学者様」
「・・・・・・殺す。淀ジョルの後に即刻殺す。いや寧ろ今すぐ殺してやる!」
「ひゃア怖い怖い、そんな濡れた猫みたいな眼で謂われちゃア、引っ掻かれる他無いですなァ」


淀×鴨川





















微炭酸薬


「すきです」
「誰が?」
「おれが」
「誰を?」
「あなたを」
「へぇ」
「ええ」
「ああ・・・寝言はな、寝て言え」
「寝ごとじゃないです」
「じゃあ嘘か」
「うそでもないです」
「じゃあ・・・なんだ。病気か」
「はい」
「おお。そりゃ良かった、じゃあ寝てろ」
「恋の病です」
「・・・・」
「すきです」
「・・・悪ィ、頭痛くなってきた、俺が寝るわ」


スモーク&エッダ





















好キ嫌イ


「では本が好きだからここに居る、と」
「違う。好きでも嫌いでもねーよ。どうでもいい」
「・・・可笑しなことを言いますね。好きも嫌いも無いのなら、どうしてまだここに居るんです」
「まだ読みきってないからだろ」
「本を?」
「そう。あんたの本棚のほう」
「ここは図書館ですよ?借りていけばいいでしょう」
「でも、これはあんたのモンじゃん。ここのじゃないだろ」
「そうですね。でも、借りたいなら借りればいい。個人でも貸し借りは通用するのですから」
「・・・。俺は、そういうの嫌いだし」
「へぇ、それが理由、ですか?」
「何の」
「ここに居ることへの」
「・・・何、あんた。そんなに俺をここから追い出したいの」
「何故です。君をここから追い出したら、僕の仕事はまた無くなりますよ」
「仕事なんて、してないようなもんじゃん」
「おやおや、心外ですね」
「それに。本当にそう思ってんなら、聞かないだろ、そもそも」
「・・・何を、です」
「どうしてまだここに居るのか、なんてこと。あんた俺のこと嫌いかオイ」
「いいえ?好きでも嫌いでもありません。どうでもいいです」
「ああそう」
「ええ」
「俺も本なんかよりよっぽど、あんたのことどうでもいいよ!」
「・・・そうですか」
「そうだよ!」
「(・・・嘘が下手だ、僕も、君も)」


エッジ&ミシェル



















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