ケーテル


「と謂う訳で、あの泉は紅く染まったってェ噺ですよ・・・、」
「つまらんな。誇張と風刺が過ぎている」
「ア、学者様・・・アンタねェ。訊くなら訊くで一言仰いなさい、趣味の悪い」
「勝手に聞こえてきたんだ、知るか」
「又適当な言い訳を・・・訊く気が無いなら他へ行ったら如何です」
「・・・ここは「私」の支部長室だが」
「ヘェ、初めて知りました」
「じゃあ教えてやろう。・・・貴様が出て行け!」
「否ですよ、面倒な。暫くしたら下へ帰るんです、
 此処最近は話して居ませんから今の内に慣れとかんと」
「私は仕事がしたいんだ!そんな話を聞かされてみろ、集中できんではないか!」
「おや、そりゃ如何謂う意味でしょうかねェ。あたしの噺はそんなに耳馴染みが好いですか」
「言っただろう、つまらん、と。お前の話を聞く趣味はない!」
「つれませんねェ。下じゃア随分人気なんですよ、あたしの噺は」
「どうせお前のような異形ばかりが住む地なんだろう」
「元人間ですよ。そう変りは御座いません」
「・・・いや。それでもだ、納得できん、私は」
「何をそんな頑なに否定します。面倒なヒトだなァ、アンタも」
「とにかく!出て行くか黙るかしろ、邪魔だ!」
「アー。さァさァ次に御噺するのは、頭に獣の耳が生えた女の噺だ・・・、」
「聞け!お前っ、わざとやってるだろうっ、この馬鹿!!」


淀と鴨川















星の最果


「センパイ。ココ、乗客、来るんすか」
「来ますよ」
「来ねェじゃねェすか。今日で客来ねェの10日目じゃねェすか。
 そもそも車両が来ないじゃねェすか」
「そうですね・・・ここは基本的に最終点ですから、あまり車両は来ませんね」
「それって人も来ねェってことじゃねェすか。つか最終点てマジすか」
「ええ。てっきり知っているものだと思っていたのですけど」
「うわー・・・やっぱ、オレ、トバされたんだ・・・・・・」
「何ですか、左遷だと?」
「オレ、南十字星の方の配属だったんすけど。ヘマしちって、次はココだって」
「・・・ああ、そうだったのですね」
「センパイは、ずっと、ココすか?」
「そうですよ。私は終着駅の守人のようなものです」
「よく、続けてられますね」
「ここからは宇宙が見えますからね」
「・・・ウチュー?ココ、じゃないすか」
「違いますよ。「個」としての、宇宙です」
「コ?」
「ええ。母なる生き物そのものとしての、宇宙です。
 彼女に会ってご覧なさい、よりこの空間を愛せるようになる」
「・・・スンマセン、さっぱりわからねェっす」
「それが普通ですよ。さぁ、君が待ちかねている車両、今日は来ますよ。12時に着く筈です」
「うおっ、マジすか!ヒャー、久しぶりのシゴトだぜ!」


オクターヴ&DJ車掌(没キャラ)















仮想人世


「キカイ」
「ああ。この身体の半分は、既に機械になっている。
 元々ヒトの倫理からは外れた生き物だ、問題あるまい?」
「まーね。自分から天使なんかになろうとするヤツは、確かに狂ってると思う」
「我々は自らの手で完全を掴み取る他無いからな」
「うん、そう・・・あ、そうだ、そういや彼は?」
「知りたいか?」
「知りたいね。あんたがこれ程面白いなら、彼もさぞかーし面白いんだろうと思う、俺」
「奴は、謂わば私より余程人間に近しい場所に居るよ。感情とは心と言うものなのか?」
「・・・珍しい質問。心?あんたが一番嫌ってるものじゃん」
「そうだな。感情など無意味なものだ」
「何?彼はそんなに感情を大事にしてるわけ?あんたと違って?」
「そうさ。前に話したろう、奴は好意に溺れていると」
「そんで男に惚れてるって」
「その通りだ。奴は苦しんでいる、焦がれる事や欲する事に。これは何だ?これが恋か?」
「人間が恋だの愛だのに執着すること自体、俺には意味不明なんだけどさ。
 誰かが言ってたな、「恋愛の真の本質は自由」、・・・だとか?」
「自由、だと?」
「あんたが欲しいものは完全、だろ?」
「そうだ。そして奴が求めているものも己という個であり、それより産まれる完全である筈だ」
「そんなら、問題は彼が男を好いているってことなんかじゃないよ」
「奴が感情の先にある好意を得た事か?恋愛という自由を求めている事か?」
「あんたが要らないと言ってるものを、半身の彼は崇拝してるんだろ?
 もう、あんたらは同一でもなんでもないじゃないか」
「身を引き裂かれるようだよ。この苦しみを私にも獲ろと言うのか?少年」
「違うね。俺が言いたいのは、あんたらは別の生き物として生きていけるってことさ」
「・・・下らぬ冗談を好くな、悪魔よ。
 君が偽りを下僕とする魂の裁定者とて、その答えは聊か粗暴に思うがね」
「人間を慈しまない天使?上等じゃないか!
 彼の愛を屠るあんたは、あんたとして歩めるんじゃない、天使様?」


エヴァミミ&デビルマンニャミ















キレイだ


「イツワリがあれば嘘がつけるの?」
「ううん。嘘ほどイヤなものはないよ、きっと」
「でも、イヤなものこそキレイなんだって、言ってた」
「だれが?」
「しらない。だけど、言ってた」
「ちがうよ。だってほんとうにキレイなものはだれがどう見たってキレイだもの」
「ほんとうにキレイなものは見た目じゃないって。ココロがキレイならそれはキレイだって」
「ココロは見えないから、キレイかキレイじゃないかなんてわからないよ」
「わからないから、ステキなんじゃないのかな」
「わからないから?」
「そう。ボクらまだなんにも知らない。だからこうしてユメが見れるんじゃないのかな」
「ユメ。ワタシたちのユメ?」
「うん。たのしいまいにち、たのしいおんがく。ボクらで、キレイなものを知ってゆけるんだ」
「そっか。それなら、ココロがキレイかも、知ってゆける」
「きっとそうだ。ボクらのぜんぶをつないでいける」
「ステキだね」
「ステキだよ」
「ワタシたちのユメは、きっと、キレイになっていくね」


マーマーツインズ
























リベンジ!


「つうか!なんすか!せんせーも唄うんならはじめから言って下さいよおっ!」
「あー?俺はシークレットゲストなんだから言えるわけねーだろうが」
「知らねっすよ、ミサキさんが大はしゃぎしてんの見ておれ先生が唄ってたっての知ったんすよっ!?」
「あいつの情報収集能力が異常なだけだろ。つうかあいつはホストに誘われたって・・・」
「カンケーないっすよ、せめておれがココに居たときに唄ってくださいっ!!!」
「それ俺が決めるわけじゃねーし。文句なら主催者に言え、主催者に」
「ひどいっす!久々に会うやつばっかで喜んでたおれに対するイジメですかっ!?」
「たまたまってだけだろ。ハイハイ、今回は残念だったなー」
「まじあしらわれるとか勘弁ですよ!ミサキさんはミサキさんでなんかおれのこと目のカタキにするしー!」
「あいつは俺もわからん」
「そーゆーアレじゃないでしょー、せんせーがも少しミサキさんに優しくしてくださいよっ、
 つーか先生はおれに優しくしてくださいよーっ!」
「・・・何言ってんの?」
「本心ですっ!」
「あ、そう」
「・・・・・・・・。 えっ、いやいやいやちょっとなんでソコ流すんすかっ!?」
「え?何?本心だろ?伝えたんだろ?ならそれで終わりだろ」
「さすがにバカですかっ、こーゆー時はフツー、
 「そうだな、俺ももう少しお前に優しくしてやんなきゃな」、とか言うでしょおー!」
「お前俺のモノマネ下手だな」
「ドコに注目してんすかあーーーっ!おれはマジなんすよっ!」
「分かったっつーの、お前にもミサキにも優しくします、ハイハイ」
「はいっ・・・あっ、いやっ、やっぱ、ダメです!」
「ハァ?何が?」
「やっぱミサキさんじゃなくて、主におれに優しくしてください!!!」
「・・・お前さァ、そういうこと言うから、あいつに冷たくされてんじゃねェの?」


DTO&ハジメ















四十丸


「おはよー」
「おはよう。寝たね。爆睡だったね」
「うん。緊張して寝すぎた」
「なんだそれ。起きろよ」
「今起きたからいいよ。うん。あ、カレンダーは?」
「ん、ん。あっち。はい、ペン」
「あー、コレ、か。まーご丁寧にいちいちバツつけちゃって」
「いーでしょ別に。ひとの勝手でしょ」
「うん、いい。つーかあたしもしてる、あはは」
「マジでお前自分のやってること棚に上げるよな。いいけど。パンどっちがいい?」
「クロワッサン。ええとー。付けるよ、いい」
「うん。ぐるっと頼む」
「おっしゃ、いーっ、よいしょー!」
「・・・・。 おー。付いたね。案外キレイに書くじゃん」
「だっしょ。なめんなっつーのっ」
「うん、いいじゃん。綺麗な丸」
「げっへへ」
「よしっ、じゃ、朝ごはん食べたらウチ寄って、行くか」
「うん。あーあ、ホント、まさかキミとこんな長く居るとはね〜」
「あたしの科白だよ。あんたほどのバカに会ったのは奇跡だ、ホント」
「あたし全ッ然バカじゃないですけど?」
「そうやって自分だけ自信満々になっちゃってるところがバカだっつってんの」
「えー。あたしだって、ミミちゃんがこんな毒舌女だって思ってなかったつうの〜」


ミミニャミ















夜に馨る化粧瓶#4


「止めてくれませんか、もう」
「・・・・・・嫌だ」
「アンタがこう強情になるのも、・・・珍しい話だ」
「私はあの女に訊いたのだ。引き上げる事も出来ないのなら、共に沈め、と」
「其れで?アンタは、其れを鵜呑みにしてあたしと一緒に死ぬと」
「そうだ」
「・・・全く下らない戯言ですな。魔女も随分な事を謂う」
「貴様が死ぬつもりなら、私を連れろ。お願いだ」
「アンタが死んで如何なります?無駄な犠牲程、愚かな物は存在しません」
「私が居れば、貴様の隣が埋まる」
「其れで?」
「誠の愛を得る」
「は・・・愛、ね!此れ又随分、滑稽な事を!遂に狂いでもしましたか」
「私はあの女の言葉に真実を視たのだ。狂っていようと構わない。共に往かせろ」
「アンタが死ぬ必要は無い」
「有る。貴様を救える」
「あたしは、・・・救い何ぞ、求めちゃ居ない」
「嘘をつくな。この期に及んで、私をあやすな!」
「・・・あたしの為の犠牲等懲り懲りだ、と謂う事ですよ。アンタに死んで貰う程、あたしには価値が無い」
「価値など私が見出す。私が、お前を望んでいるんだ!」
「大層なヒトだ。・・・もう陽が消えます。帝都は聖夜を祝い、虚構の存在を作り上げる。
 そう為れば、あたしも消えます。摩天楼が夜の化粧瓶に変わって行く様に」


淀鴨@パラレル















ダークシード@salvation


「ほォ、宛らあれの騎士というわけか!お目出度いな、若造!」
「拙者は冗談を言いに来たのではありません、魔女殿、どうか彼の居場所を・・・!」
「黙れ!あれを救うなどと戯言を抜かす者はあの耄碌だけで充分だ!」
「しかし!」
「貴様は何だ?あれに、救う程の価値を視るのか?
 己の為に、他を危める生き物の何処に救うべき意味が在る?」
「救う価値のない生き物などおりません、魔女殿」
「たかだか二十数年生きてきただけの貴様に何が判ろう?あれは死ぬべき生き物だ」
「死ぬべき生き物もおりません!彼は、生きたがっている!救いを求めている!!」
「・・・必死だな。そう迄して、奴を生かし・・・そして、また繰り返させるのか?愚かな復讐とやらを」
「彼は知りました。もう気付いている、こんなことは無意味だと。
 いえ、違う、初めから知っていたのです!」
「・・・それだけで、あれを救うと云うか?」
「そうです。拙者は救いを乞う家族を、村を、救うことが出来なかった。
 ・・・もう、これ以上、誰かが目の前で壊れていくのは見たくないのです、魔女殿」
「貴様の贖罪があれを救うのか。貴様の癒しの為に、あれを利用するのか?」
「拙者は逃げません。そう言われても、仕方が無いのなら、拙者はそれを受け入れます」
「愚かだな」
「おろかです。だからこそ、彼を、救いたいのです」
「貴様には何も残らんぞ。反発するエネルギーによって死ぬかもしれん」
「構いません」
「森を守り、あれをも救うのか」
「そうです」
「・・・筋金入りの馬鹿だな」
「・・・よく、パロットにもそう言われておりました」
「フッ。・・・そうか」
「魔女殿」
「北へ行け。森の力が尤も弱まる場所だ。そこに鳥は居る」
「・・・魔女殿」
「妾は機嫌が悪いのでな。とっとと此処から出て行って貰いたい」
「あ・・・ありがとうございます!この御恩、一生忘れません!」
「黙れ、狐。死なせたくないと云うのなら、直ぐに行動に移したらどうだ」
「はい!」
「・・・」
「救う、か。・・・パロット。貴様はあの男の想いを知っているか?」


イナリ&ロキ















復活祝い


「せんせーっ!おれの勇姿見ましたかーっ!」
「え。ああ、悪ィ、ビール飲んでた」
「ええええええ、ちょ、っとなっんすかソレ!おれ必死で歌ったんすよっ!」
「声は聴こえてたよ、うまかったうまかった」
「んな、チータラ片手に言われたって納得できないっすよ、ちょっとせんせえっ!」
「うるせえな、お前生徒のために歌うとか言ってただろ、オイ」
「ソイツとコイツは別ですよっ、先生は先輩なわけだし、聴いてほしいじゃないっすかあっ!」
「だから耳元で騒ぐなコラ、新曲歌えたんだからいいだろーがよっ」
「ダメっす!先生がマジメに聴いてくんなかった、ってんならおれ、もっかいここで歌いますから!」
「ハァ?何言ってんの、お前」
「いきますよっ、せーのっ!・・・〜♪」
「うわーお前本気で歌うか!待て待てまわりがこっち見てるぞ、止めろっ」
「やですやめません!聴いてください!」
「筋金入りのバカだよお前は!いいから止めろ、止めてくれっ!!」


DTO&ハジメ






























阿弥陀籤


「・・・で?何のつもりだ」
「一寸したゲエム、って奴ですよ」
「ゲーム。これがか」
「ええ。当たりが出たらアンタはあたしの謂う事を何でも訊く、と」
「・・・なんでも」
「ええ、ええ。外れたらあたしがアンタの謂う事を訊きますよ」
「イカサマか」
「・・・、何を失礼な事を。戯れですよォ?」
「・・・どちらか選べと」
「そうです。線が印の有る方へ出りゃアンタの勝ちだ、判り易い」
「・・・本気で私の言うことを聞くのか?」
「勿論」
「・・・・・・・」
「さァ、速くして下さいよ学者様ァ」
「右だ」
「ヘェ。右ですか」
「文句でもあるのか、異形」
「いえ?右ですね、右、と」
「・・・本当に言うことを聞くんだな」
「何回確かめりゃ気が済むんですか、今なぞろうと思ってた処を」
「聞くならいい。早くしろ」
「ったくねェ。随分目が真剣ですよ、学者様」
「・・・、うるさい」
「何ですか、そんなにあたしに頼みたい事でも?仰って下されば何なりと従いますのに」
「中途半端な嘘をつくな!右だ、右!」
「ハイハイ。何だかなァ、アンタにも相応の望みが有るって事ですかねェ」
「・・・知ったような口を聞くな、忌々しい!」


淀と鴨川



















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