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さばよみ


「・・・物欲しそうな顔だな。食うか」
『たべます』
「ああ。やるから勝手につまめ。俺は別なの取ってくる。・・・ん?」
『これは?』
「だからお前が食え。どうせろくに食ってないんだろ、少しでも腹に詰め込め偏食家」
『はい』
「ったく。お前が来てから食料庫の中身がバカに増えたよ」
『すみません』
「謝んなバカらしい。コンデンスミルク舐め続けられるよりゃよっぽどマシだ」
『あれは、おいしいです』
「蜂蜜狂が治まったかと思えば練乳だもんな。大概、お前の舌はおかしいよ」
『たばこよりは、マシだと思います』
「ハ、言ってくれるな。ガキには判らんだろうよ、あの苦味の美味さがな」
『苦いのは、きらいです』
「だろうよ。1日にチューブ何本空けた?忘れもしねェぞ、俺は」
『3本?』
「6本だよ、何半分もサバ読んでんだこの野郎」
『スモークさんの3箱よりはマシです』
「・・・何を数えてんだ、暇人」
『ひま人です』
「自ら言うんじゃねェよ。おいちょっと誇らしげにすんな、自慢出来ることじゃねェぞ」
『たばこは、体にわるいですから』
「・・・一丁前に説教か?それとも何か、皮肉か」
『ちがいます、おれは』
「俺は?」
『なんでもないです』
「・・・何だよ、半端だな。とりあえず、それは食えよ。判ったな」
『はい』
「お前はなァ。・・・言いたいことがあるなら書け。別に練乳ばっか食ったって怒りゃしねェぞ」
『・・・すみません』
「あ?何がだ」
『ミルク、6本じゃなくて、10本です』
「・・・判った、前言撤回だ。しばらくコンデンスミルクは買わねェ、以上」
『・・・・』

スモーク&エッダ















ハネバネ


「君は私を喰らうのか。それとも殺すのか」
「どっちも面倒になったよ。喰らいたくて殺したいのはあんただろ」
「・・・そうだな。私は未だに何も果たしていないのだ」
「完全、なんて無意味だぜ。喉を掻っ切ればどんな奴だって不完全になる」
「いや。互いに異なる死を抱えている時点で、既に我々は不完全なのだよ。少年」
「なら、あんたは完全になったら不死になるのか?」
「どうだろうか。私の定義する完全は、不死とは違うような気がする」
「・・・それなら、どうして完全になりたいって思う?それこそ、無意味じゃないか」
「違うな。不完全であることは、我々から言えば「未完成品」だ。
 人は常に完成されて生まれてくる。しかし、私たちは誤った形で存在してしまった」
「だから、殺すのか」
「そうだ。私たちは互いに己の完全を望んでいる。血の本能とも言えよう。その結果としての殺人だ」
「不完全のままじゃ駄目なわけ」
「君は空の魂を嫌う。今の私はその空の魂、そのものだ」
「・・・確かに、あんたは空っぽだけどよ。俺には、どうもあんたは完成されすぎてるように見えるぜ」
「この滑稽な羽と輪を見てもか?」
「上等な天使じゃないか。あんたは殺人以外の方法でも充分完全になれると思うけどね」
「・・・心と身体は反するものだ。彼の喪失無くして私の完全は有得ない。
 私の喪失無くして彼の完全が有得ないように」
「で?その彼は、何やってるわけ?」
「他界で盗みと逃亡の茶番を行っているようだよ。如何やら奴にも好意という物が芽生えるらしい」
「不完全なのに?変だなあ、あんたら」
「男に惚れているのが又滑稽だ。流石、小生意気な怪盗の仮面を被っているだけの事はある」
「・・・男ねぇ。不完全の定義なんて、それぞれだってこと?」
「何が言いたい?」
「いや。人が持つ感情に、ちょっと可笑しみ持っただけ」

エヴァミミ&デビルマンニャミ















畦の腫瘍


「あれ、淀さん。帳くんは?」
「詩織かァ。俺も探してんだよ、何処行ったか知らねェか、あの莫迦」
「あたしが知るわけないじゃん。そもそも今日検査の日だから来たわけだしさぁ」
「朝から居ねェぞ、鴨」
「マジでぇ?使えないなー。でも検査はなぁ・・・」
「なんだ。異能か」
「そう。やっぱり安定させるためにはチェック入れとかないとダメだから」
「ヘェ。鴨が認めてるワケか、そいつをなァ」
「そーよっ。漸くんも鍛えれば完全になるかもよ?フフン」
「ハッ。不完全って再三謂われてんだぜ、やる気出ねェよ。つうか漸くんて謂うな」
「だって淀さん、帳くんにいっつも窘められてるからさー。こう、ギュっと襲っちゃえばいいのに」
「んな事は毎日してるが」
「あ、そう。してるのか。帳くん力弱いもんね」
「其の割にゃア無駄な理屈並べて逃げるがな。何だ、あの理解不能な生物は」
「んー・・・。そうだな。キチガイ」
「気違いか。ン、理解出来なくは無ェな」
「ってか、一々言葉で負けることないじゃん。そもそも力で勝ってんだから」
「まァな」
「どーしてそんなスナオに従ってるの?やんごとなき理由?」
「テメェは下世話な女だよ。・・・好奇心旺盛だなァ」
「10代のバイタリティ舐めないで。あたしモテんだから、結構」
「顔だけは好いからな」
「そう。顔は強いっ。だから教えてー」
「・・・・詩織」
「なに?」
「オマエ、鴨が泣いた処視た事あるか?」
「え。・・・は?ない。ない、ないない。つかあの帳くんが泣くってのがない」
「・・・其れがな。泣いたんだよ。初めて捩じ伏せた時」
「え。ウソォー。まっさか。そんなのであのヒトが動じると思えないよー。
 だって、ジョル様に押し倒されるの毎夜夢見てるようなヒトだよ?
 淀さんのことはいい練習相手とか思うぐらいだって」
「厭々、其れがなァ・・・俺も未だに幻覚としか思え無ェんだが・・・」
「え・・・ホントなの?あの帳くんが?ウソォ」
「アレがだよ。まさかだろ。俺もあの莫迦鴨が泣くとか想定して無くてだな・・・」
「うわっ。それは。見てみたい。見てみたすぎ。えー。うそ、やだ、見たいな、ソレ」
「絶句するぞ。余りの酷さに」
「なに、ヒドいんだ。ヒドいのか。それもっと気になるな」
「実際の処、アレだ。「とらうま」だ、俺は」
「と・・・トラウマ。ヒドいね、それは。スゴイね」
「酷いぞ。酷い。オマエは下世話だがアレだ。未だ若いだろ。アレは視ない方が善い」
「・・・言うなぁ。すごいな。見たい。それは是非。より見たい」
「なら、鴨囲ってみろ。俺が又適当にヤれば、泣くかもしんねェ」
「うん。・・・やばい、なんか楽しくなってきた。やばいね漸くん」
「何がだよ」
「いやぁ、もう。ジョルカエフ様にして差し上げる楽しいお話のネタがまた出来たなと思って」
「結局其処か。オマエもキチガイだぞ、詩織。後、」
「『漸くんって呼ぶな』、知ってる。でもあたし、帳くん襲おうって思う淀さんには負けると思うな」
「・・・・・」
「ね?」
「・・・嗚呼。今迄オマエが謂った事の中で、若しかしたら一番正しいかもな、其れ」

2P淀&詩織















情景として


「おっ。ニコラシカ、何やってんの?」
「ブキノ、手入レダ」
「武器ィ?」
「ソウダ。ワタシノ、「相棒」ダ」
「相棒なァ。・・・それっておれのことじゃなくて?」
「ウヌボレルナ。オ前ハ、唯ノ「ゲーマー」ダロウガ」
「・・・ひっどい!なんだその言い方っ!おれ、泣いちゃうよ!
 冷たいお前に、おれちゃんと付き合ってると思うけどなァ!ねェ!?」
「・・・ソウカ?」
「そうだよ!」
「ナラバ、ソノ様ニシテオコウカ」
「なんだっ、その取って付けたよーな言い方ッ!そういうのが冷たいんだよっ!」
「取ッテ、ツケル?オ前も、難シイ言葉ヲ使ウンダナ?」
「キーッ!てめえっ、ぜってーおれのこと舐めてんだろっ、このぉーっ!」
「・・・フン。オ前ダッテ、冷タイジャナイカ」
「あー?ど・こ・が・だ・よ!?」
「ワタシヲ「大切」ダト言ッテオキナガラ、ソノ態度ヲ全ク見セナイ」
「・・・・・・・・」
「アカラサマニ目ヲ泳ガセルナ、馬鹿モノ」
「だ、だっ、だってよ〜・・・は、恥ずかしいじゃんか」
「ホウ?恥ズカシサハ好意ニ勝ルノカ」
「おまっ・・・、・・・・な、なんだよ。お前のことは大事ですよ。それが何か!?」
「大事デ、ドウナンダ?」
「・・・アー。アーアー。好きですよ。だから何ですか!?」
「フフッ、可笑シイ」
「な、なんだよ!笑うなよっ、バカかっ!」
「ソウダ、馬鹿ダ、ワタシハ」
「なっ・・・何だソレ、どーゆー意味だよ!?」
「オ前ノソンナ言葉デ、タマラナク嬉シクナル。・・・馬鹿デ、当然ダ」

コサイン×ニコラシカ















やかまし屋


「じゃ、何?」
「ボク、空から来たんです。海へは、用事が、あったんだけど・・・、」
「いやいやいや。お前はイルカだろ。海洋生物だろ。なんで空から来るんだオイ」
「・・・と、飛び込むのが、苦手なんだ。キララに会いに行くって約束だったから、
 今日はがんばろうって思ってたんだけど、その・・・」
「じゃあそのかわいい尋ねビトのお姉ちゃんはどこにいるんだオイ」
「え、あ、き、北。もっと北の海」
「ハァ?ここは南なんだけど」
「そう。パラシュートが壊れちゃって、落ちちゃったんだ」
「で、俺のまえに落ちてきたと」
「そ、そう。ごめん、お兄さん」
「じゃあ何だ。お前はイルカでそのくせ海に飛び込むのが苦手でパラシュート背負ってて、
 キララっつーえらいかわいい姉ちゃんに会いに行くために北の海へ行きたいと」
「うん。でも、海だとボク、あんまり力が入らなくてうまく泳げな・・・」
「おいいいい!だからお前はイルカだろおおぉおおぉおおーーーが!!!!」
「ご、ごめん、ごめんなさいっ。でも、ボク・・・」
「ああああぁぁあああ、もぉおおぉおぉ面倒なやつだな!お前っ、名前は!?」
「え?ぼ、ボク?く、ククー。ククーっていうんだ」
「俺は洋次郎だ、コノヤロー!北へ行きたいんだな、お前は!!」
「ウン・・・、ご、ごめん、なさい」
「謝んな!ふざけんな!つうかなんだイルカのくせに海苦手とかなんなんだ空飛ぶな!!」
「え、あの・・・・、ええと、」
「俺は美人が大好きだ!だから北に行ってやる!断じてお前のためではないっ!
 でも感謝はしろっ、ククー!ああ俺が暇だからって訳でも断じてないぞ!」
「ええと・・・ボク、あの。どうすればいいの、洋次郎さん・・・・?」

洋次郎とククー















とおくへ、


「別に、いえ。僕は、好意だなどと、そんな大それたことは」
「え?な、なに。コーイ?・・・え、好き?とか、ど、どーしたの、急に。ちょっと」
「・・・え。あ、れ。そういう話では無い、・・・んですか、エッジ君」
「何、言ってんの。俺はただ、」
「・・・・・・あ。そ、そうですか。いや、そういう話でないのなら、いいんです。はい、ええ」
「あれ、・・・ん?」
「忘れて下さい。別に関係ない話、なのでしょう」
「へー。ああ、なんだ。・・・珍しい、のな」
「・・・。 何が、ですか」
「焦ってる、でしょ。俺にも分かる」
「・・・もしもそうだったとして。・・・これは、君の手柄ではないのですよ」
「でも、俺が言った言葉じゃん」
「そういうことは、誘導尋問が出来るようになってから・・・、」
「ねぇ、聞くけど。・・・ミシェルさんて、俺のこと、・・・好きなの?」
「どうでもいいことでしょう」
「どうでもよくないでしょ、俺のことだもん」
「君には関係ありません」
「関係なくないよ、俺、嬉しかったし。いいじゃん、関係あるって」
「・・・君は、嘘が下手です。止めてください」
「・・・・・。あのさー、何でそういう冷めたこと言うかな、こういう時までさぁ。
 あんた、それじゃ、ほんとに寂しい人じゃん」

エッジとミシェル















べしゃり暮らし


「うーん、願ったり、望んだりしちゃいけないってゆーか?」
「なにそれ。ネガティブの極みー、だね」
「きわみー、だよー。眠いし。だるいし。やってらんないっすよ」
「面倒っすか。メンドウねー。甘いものでも食べてさ、ほら、落ち着け」
「チョコかー。バレンタインデーだね。あのね、イイ人の命日だよ、バレンタイン」
「はいはい、弔い弔い。だから食え。今日だけなら、チョコ食べても誰も怒らん」
「おこらないだろね。みんな好きって言いたいもん」
「好きな人に?」
「そー。好きなひとにチョコあげて、自分の気持ちを甘さでふやかすのさー」
「じゃあ、これも粉ゼラチン代わりのチョコでいいじゃん。はい」
「んー。あー。これは「好き」?」
「好きでもいいし、嫌いでもいいし。どっちでなくてもいいよ」
「・・・うそだぁー」
「嘘じゃないなぁー。ん、あ、ここは「どっちでもいい」って言うべきだったかな」
「どっちでもいいー」
「あんたねぇ・・・」
「あー。よっ、と。食べていい?」
「いーよ」
「うん。いちご、カカオ、まっちゃ」
「抹茶?それピスタチオだよ」
「ええー?ないない〜」

ミミ&ニャミ















まねまけ


「出番だよ、・・・先生ェ」
「・・・とりあえず聞いてみようじゃないか。それは何の冗談だ」
「いやなァ。下のハコで謂ってたから、真似した。悪ィか」
「全く。ヒトの領域で軽々しく遊ぶのも大概にしておいたらどうだ?
 人間は君が思っているより化け物慣れしていないぞ、漸くん」
「別に俺の存在がバレた処でなァ。適当に消しゃア良いだろ」
「まぁ、・・・それもそうだが」
「じゃア好いじゃねェか。何の文句が」
「少なくとも。ここでそれをされてはジョルカエフ殿からまた遠のいてしまう。
 君の、所為でね。だから止めてほしいと思うよ、僕は」
「まァた淀川か」
「ジョルカエフ殿さ。愛しき方へ捧げる一心の感情ほど美しいものはない」
「自分で謂うかァー、吸血鬼ィー」
「君に言われたくはないね、この拘泥魔」
「・・・チッ。口だけ達者な顔すんな、阿呆鴨」
「落ち着きたまえよ、漸くん。そうだな、先程の科白をもう一度言ってみたらどうだ?」
「ハァ?ドレだよ」
「・・・・全くつまらないな、君は。忘れているのなら構わないが」
「? ・・・・。・・・嗚呼、成る程なァ」
「漸くん。なぜそう気色の悪い顔をする」
「いや、別にィ。珍しい、とか思っただけだけどねェ?」
「・・・君の悪癖は、感情をすぐ顕わにするところだな」
「御前も中々だぞ、「先生」?」
「・・・・・漸くん」
「あ?何だ、」
「うるさい」
「・・・ッ、ンだとォ!?」

2P淀鴨















夢の烏鷺


「ゆめ、の、ゆめ」
「げんじつ、の、ゆめ」
「おわってしまう、ゆめ」
「ゆめ、ゆめ」
「さよなら、の、ゆめ」
「いつか、の、ゆめ」
「じきになくなってしまうの」
「なにもかもとぎれてしまうの」
「ごめんね」
「さよなら」
「ゆめ、は、ゆめ」
「しっているの。」

ν&μ






























4カード


「暇ね。」
「何がだよ。目の前に素敵なお客が居るじゃないの」
「・・・貴方みたいな子どもの相手をしなくちゃいけないほど、暇なの、私」
「イヤミな人だなぁ。僕の腕、中々だと思うんだけど」
「せめてイカサマでもして下されば奥に引っ張れるんですけどね」
「僕は職業以外は結構まじめに生きてるつもりだよ。君が慈善にお金を使うようにさ」
「ギャングがそんな事言っても信じる人なんか居ないわよ。カード、チェンジするの?」
「2枚。今は善良なギャンブラーだよ。出す金ぐらい遊ばせてよ」
「はいはい、「ボス」。いつも巨額の資金提供ありがとうございます」
「・・・君、ほんとにイヤミだね。恋人居ないでしょ」
「孤児院の皆が私の可愛い恋人よ。はい、カードどうぞ」
「ったく。美人なのにこれじゃなぁ」
「煩いわよ。どう、いかが?手札の具合は」
「・・・ブタ」
「あはは。ザマーミロ」
「君ねぇ・・・」
「分かってるわよ。貴方には感謝してる。私の腕を買ってくれたんだもの」
「そうやって素直なのが一番だよ、キャーロル」
「ねぇ、名前呼ぶとき伸ばさないでくれっていつも言ってるでしょ、キッド」

キャロル&キッド



















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