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ドッペルゲンガー


「・・・おや。・・・可笑しいなァ、支部長殿は何処へ行きましたかね」
「お早う。僕も良く判らなくてね、困っていたんだよ。君は随分まともなようだが、
 ・・・なぁ、物の怪。君の炎は赤いんだな。成程、「本物」と言う訳か」
「何の噺、でしょうかな。誰だ、アンタは?」
「・・・僕にお誂え向きの人格だとて、僕の好みだとは限らないのだな。
 初めて知ったよ、僕も聞きたいね。漸くんをどこにやった?」
「アンタの尋ね人が誰だかは存知ないがな、・・・質問には答えて貰おう」
「その侭、科白を返すよ。ここは広いな、僕の研究室もこの位広いと良いんだが」
「逸らかすのは止めて戴きたい物だ。どうやって此処へ這入った」
「知らぬ、存ぜぬ、と言った処だよ。・・・IDAA、国際異能研究、機関。
 ・・・ここはジョルカエフ殿を扱う研究施設、か?」
「鬼に向かってそんな尊称を使う人間は此処には居ない。
 ヒトだろうと、あたしは容赦しないぞ。己の世界に、速く帰れ」
「・・・。やれやれ。漸くんの方が、余程僕には易しいな」

/

「おい。・・・テメェ、誰だ?」
「な、あ、あ、ダース。炎が、お前、緑・・・、・・・?」
「髪の毛が青い。肌が黒い。包帯巻いてねェ。3つも有りゃア充分な違いだろォが。
 おい、化けたか?冗談は好かねェっつってんだろ、屑鴨」
「・・・な、お、・・・お前は・・・?」
「・・・違う。5つだ。気が弱すぎる。それと「ダース」。「漸くん」じゃねェ」
「ダース・・・?ぜ、漸、くん?な、何の話だ、」
「話に為らねェな。鴨の顔と声で、違う男。誰だ?御前」
「・・・き、貴様に教える理由は・・・」
「ハァ、そんでも強情で意固地な処は変わらねェって訳か。
 面白ェなァ。俺の莫迦な吸血鬼、何処往ったか知らねェか?」
「わ、私が知るか!貴様こそダースの容姿で意味の判らないことを並べるな!
 私を元の場所に返せ、異形!」
「・・・6つ。「僕」じゃない。・・・やっぱ御前、鴨じゃねェな。
 容姿が同じなら誤魔化せるかとも思ったが、斯う脆そうじゃ嬲り甲斐がねェ」
「な、嬲、る・・・」


淀鴨 1Pと2P/2Pと1P






























夜に馨る化粧瓶#2


「死に近付きたいか、焔」
「・・・どちらかと謂えばな。もう孤独には飽いちまった」
「咎に囚われる事にもか」
「厭な質問だ。あたしの生きる意味を奪う気かい」
「心底。・・・貴様は憐れだ」
「珍しいなァ、魔女!アンタからそんな言葉が出るなんて」
「人間は愚かで下らぬ生き物だ。奴等の為に耐える事など、本来は何も無い」
「だけどもな、あたしは見守らなくちゃアいけない訳だ」
「何故だ」
「与えたら此処は沈んじまうし、望んだら存在が失われちまう」
「成らば、あの男は何だ?」
「有れかい?・・・御節介で向こう見ずな唯の友人、其れ以上でも以下でも無ェさ」
「・・・そうか?」
「何だい、其の何か謂いたそうな眼は」
「奴は人間だ。よって愚かだ。言うまでもない。・・・貴様を、救おうとしているのだからな」
「・・・あれはアイツの道楽だろう?滑稽なあたしを、其れこそ憐れんで居るだけさ」
「そうは見えん」
「其れはアンタの主観じゃないかね」
「主観だよ、焔。聖者の死んだ時代に貴様の生き方はそぐわぬ。
 それを心底虚しい形で、あの男は愁いでいる。・・・・・・・・或いは、」
「・・・魔女。アンタが何を謂いたいのかは知らんがね」
「訊け。未来を殺す呪いは絶つべきだ」
「如何在ろうと、あたしはあたしさ。逃げる事なんぞ、初めから考えちゃ居ねェよ」

ロキ&淀@パラレル






























三者択一


「許して、なんて言わない。すべて遅すぎるもの」
「すべて?」
「すべて。去ってしまうわ。時も人も」
「誰の目にも明らかなくらいに?」
「私の眼に明らかなくらいによ。幸せは遠いわ」
「不幸は寄り添う?」
「おそらく不幸も離れていくわ。幸福も不幸も、私の前には存在しない」
「じゃあ、貴方には何が寄り添うの?」
「孤独と不変よ。変わらない日々を、変わらない私が生きていく」
「悲しいこと?」
「寂しいという感情さえ孤独は消すもの」
「辛いこと?」
「痛みは誰かがいてはじめて存在する物よ」
「じゃあ、貴方は生きているのかしら」
「遅すぎた私は、置いていかれたまま。それは、死でも生でもない、消滅」
「貴方は居ないのね」
「そう。だから許しを請う必要もない。私は居ないから。そう。すべてよ。さようなら」

レイヴガール&トルマリン






























三○○


「すき?」
「なにが」
「キリのいい数字」
「・・・うん。別にキライでは」
「おお、よかった。はい」
「? ・・・なんじゃこれ」
「うん。キリ、いいっしょ。はい」
「DVD」
「うん。あたし見たかったんだー、これ」
「・・・・これは」
「ほんとDVD出るのって、はやいよねー。やってたの夏なのに」
「いや、確かに。あたしも見たいよ?」
「うん、だから、キリいいよね」
「たしかに、キリは、いいけどさ」
「いーんだよ。あたしはさ、ただ見たいんだから。だから見よーよ」
「スパルタかあ。グロいらしいよ」
「秋はね、グロも芸術にしてくれんのよ。じゃなきゃSAWが人気の意味がわからない」
「はあ。べつに、SAWは秋にばっかやってるわけじゃないと思うけど」
「ん。いいのさ。さあ見ようじゃないか。ムッチムチの筋肉を」
「ああ、ウン。しかし、なぜキリがいいからって」
「なんか適当なテレパシーね。届くって願ってたんでしょ」
「へぇ。だからこの数字」
「そ。1年にはあと65日足らないけどさ、うるう年ならアリだとと思うんだ」
「相変わらず意味わかんないけど。ま、見たかったからいいよ」
「そうそう。誰が何受け取ったってさ、いいんよ。たまにはね」

ミミ&ニャミ






























悔恨侮蔑


「あー。好き嫌いがさ、別れる、脅迫は。止めといたほうがいいと思うよ、俺は。
 ・・・うん、そういう、自分の首に刃物突きつけるようなのは、特に」
「僕は、自分の首に刃物など突きつけていません」
「でも彼女を差し出してるだろ。愛してる奴をさ、そうやって凶器にしちゃあ、ダメだよ」
「ならば、何故助けて下さらないのですか。ここまで僕らを匿いながら、・・・何故」
「あんたにも分かってるだろ?あの子はさ、自分の力で立たなきゃいけない。
 そんで全部受け止めないとね、前は、見れない。俺が手を貸しちゃ、何の意味もないんだよ」
「・・・・彼女は、死にます。僕には分かる。きっと、耐えることが出来ません」
「あんたはあの子を信じないの?」
「・・・・」
「救いなんて、求めてないってか?」
「・・・ここにあるものが全て真実だとしても、僕の中の真実は、彼女なんです」
「うん。それでもいいさ。けどな、あの子はただがむしゃらにね、戦うしかないんだ。
 どうしようもない現実、って奴に立ち向かうしかない」
「・・・何故、ですか」
「生きるためさ」
「でも、彼女は、」
「受け入れないか?無理だって?戻るのが怖いって?・・・死に逃げたい、って?」
「・・・・彼女は、きっと、そう言います」
「でも、あんたはあの子が生き延びてくれて、嬉しかったでしょう。
 それは紛れもない、あんたが願う、あの子の生の肯定だよ。その肯定で、あの子は生きれる」
「違います、僕は、彼女が・・・」
「違わないよ。あんたを受け止めたことで、あの子はあんたの重みを知った。
 あとはあんたが、真っ直ぐに、あの子を見てあげるだけなんだ」

トラウマニャミ&神






























魑魅魍魎


「さみしいこと」
「たいくつなこと」
「つらいこと」
「うれしいこと」
「かなしいこと」
「ここにいること」
「ぜんぶね、」
「ひとつきりしかないね」

ν&μ






























夜に馨る化粧瓶


「・・・・それも、拒絶か」
「拒絶です。あたしの雪は融けやしない」
「どれほど私が祈ってもか」
「凡ての生と引き換えに、自らを求める莫迦が何処に居ましょう?」
「何故貴様がそれを背負う。貴様は温もりさえ持つことが許されないのか」
「ハ!随分落魄れたものですな。アンタはあたしの事等疾うに御理解の上だと存じて居りましたが」
「だからこそ、願うのだ、馬鹿者!」
「・・・此の無様な孤独を埋める羽根は、残念ながら存在しませんでね」
「その炎は仮初めか」
「仮初めですよ。寧ろこいつはあたしの罰たる証明みたいなモンだ、
 凍土すら融かせない、此の愚かな炎はね」
「私は・・・・・・」
「自分が、とでも謂う御心算で?
 与える事も欲する事も咎とされた身体など、本来は必要ない筈でしょう」
「必要ないならば、何故貴様は呼吸をしている。何故存在している。何故私の前に居る!」
「・・・見つめる為です。融けない氷の底を、一生を賭して」
「ならば、欲しろ。欲してくれ。この滑稽な慰みの先にある真実を欲し、差し伸べてくれ」
「・・・偽る様に、又あの赤い実を差し出すのですか。怖れて居るのはアンタじゃないか!」
「それでも、これが、私の思いだ。・・・祈りだ!」

淀鴨@パラレル















われ鍋にとじ蓋


「帳くーん、居る?」
「なんだ、今僕は忙しいんだぞ!漸くん、脅かしておけッ!」
「・・・・駄目だァ、鴨。こいつ、何も驚きゃアしねェぞ」
「誰、あなた。あー、帳くんの知り合い?緑だ。あたしと全然合わないね、色」
「その声・・・よもや詩織かっ!君なら話は別だッ、入りたまえ!」
「オイ御前何だ其の身の変わり様・・・つかこんな若けェの連れ込んでお前・・・・・・幼女趣味か?」
「口悪ー。もしかして、あなたが噂の炎の人?帳くんの言ってた印象とはかなり違うなぁ」
「・・・オイ鴨ォ。まずコイツは何だ。んで御前は俺の何をこいつに話した」
「漸くん。まず黙って詩織の聡明な顔を見ろ。そして君の不恰好な異能を使ってみたまえ」
「え?ちょい帳くん、アニマの衝突は誘発エネルギー含んでて危ないんじゃなかったのォ?」
「は?異能・・・?アニマァ?」
「彼には僕が出来得る限りの実験を行い、君の波長とに大きな反発がないことを確認した。
 詩織、案ずることはない。我が師の名にかけて君に危害の及ぶことはないだろう!さあ!」
「オメェ、眼、ヤベェぞ」
「いつものことだよ、『漸くん』。帳くんはちょっとノーミソ飛んでるもん。
 っと、とりあえず大丈夫みたいだから、ほら、ドーンと。使ってください、あなたの異能」
「ハァ?・・・好い、のか。消えんぞ、御前。つうか、御前まで漸くんとか謂うな」
「どっちも分かってます。あたしだってあなたたちと同じで、ジョル様にお逢いしたいんだから」
「はァ?ジョル・・・・様ァ?」
「そう。あたしが将来を捧げた、不死の旦那様。
 だから帳くんとはライバルなんです。どっちがあの方のお眼鏡に適うか、ってね」
「・・・・・・・・・・」
「漸くん、何を見苦しい顔をしてるんだ。詩織を待たせるんじゃない。早くしろ」
「遠慮はいりません。あたし、おじいちゃんにも帳くんにも結構きつく鍛えられたし。
 他の異能持ちと手合わせるのは初めてだけど、シミュも大分重ねたし。検査結果も良好出たし。
 安全。丈夫。無害。ジョル様に会えずに死ぬのはありえない」
「・・・オイ。詩織とやら」
「何?さ、始めるなら早く!」
「テメェも大概イってるぞ、莫迦野郎!!」

淀&鴨&詩織(みんな2P)















流れ星になれなかった君に


「ごめんね、約束だったのに」
「約束だったよ。全部。なにもかも。すべて」
「うん。やさしくなんかないよね。嘘だもん。嘘になっちゃった」
「優しかったよ。でももう、それは過去だ。とっくにすぎ去ってしまった」
「・・・ごめんね。いつも願っていたのに」
「願っていたよ。ずっと。夢みたいに。いつか、出会ったときみたいに」
「くずれてしまったね。なにもかも」
「なにもかも過ぎるくらいに、なにもかも。望んでいたと言いたいの?」
「言いたかったな。うそみたいに、本当を言いたかった。約束も、優しさも、大切なものもカケラだって」
「カケラは無じゃないよ。悲しんだって、よろこんだって、残るよ」
「そうだね。いつか、信じていたことだね」
「そうだよ。いつも、信じていたことだよ」
「自由になるね」
「どうしようもなくね」
「ここには残れないんだね」
「何も残ることができないんだね」
「そうだね」
「そうだよ」
「じゃあ、おわかれだね」
「うん。さよなら」
「さようなら。ばいばい、わたしの好きなひと」
「ばいばい、ぼくの好きなひと」

むぎばたけ















アイズワイドシャット


「目!」
「眼ッ!」
「はァ?なに、おまえら。」
「今日、目の日だよ」
「そうだよ。眼の日だよコノヤロ」
「なに、何で俺怒られてるわけ?」
「さぁ神よ、約束を果たし給え」
「さぁさ、取り給え」
「え?何?なにを?何を取るって?」
「グラサンを取って素顔を見せ給え」
「つか取れバーカ」
「え?何?超ヤダ、そういう言い方やだ俺、バーカ」
「取れよ。取れよ。取れよー!」
「か・み・の・す・が・お!」
「ウゼーな!お前ら黙れ、えいコラまとわりつくな!」
「グラサーン」
「取れーっ」
「だああああっ、止めろボケども!!」
「ぎゃーっ」
「うわーっ」

ミミニャミ神

























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