A-Market > text-S

























赤と黒


「やってやろう、って言ってんのよ。ギャングさん」
「また嘘かい、お姉さん」
「・・・・・・嘘じゃない。本気よ。この力が役立つのなら、私は貴方に従ってもいい」
「・・・奴等、随分、腕は良いよ」
「私だって自信はあるわ。15年、ここに居たのよ。・・・見抜くわ」
「覚悟はある?狙われるよ。・・・危険な仕事だ。女の君に・・・」
「じゃあ、おじいちゃんの意思を誰が継ぐって言うの!?私しか、居ないじゃない!」
「あの人を随分大事にしているね?」
「・・・当たり前よ。私を、この場所に導いてくれた人だもの」
「成程ね。ここ数日で、良い目になったじゃないか」
「当然じゃない。・・・こんな状況で目が醒めない人間のほうが、おかしいわ」
「なら、僕は止めないさ。君の思うようにやってみたらいい」
「貴方もね。せいぜい潰されないように、頑張って」
「ああ、ディーラーバニー。このカジノの平和を、末永く守ってくれたまえ」

キャロルとキッド
























午前10時


「・・・あと5分」
「テメェは何処の餓鬼だ、っつってんだよ、鴨ォ」
「漸くんはうるさい。声が大きい」
「巳の刻に起こせっつったのは御前だろうが。
 態々俺が声を掛けて遣ってるんだ、起きりゃ如何だ、阿呆」
「・・・・肩を蹴るな。痛い」
「痛けりゃア起きるだろ?コウギだぞォ、キョウジュー」
「馬鹿を言うな。今日は休講に決めた」
「何時決めたんだ、屑」
「今だ、化物」
「アー、次は顔面だな」
「・・・・・起きたくない。面倒だ。顔は止めてくれ、ジョルカエフ殿の為に無傷にしておかねば」
「淀川の事なんぞ知ったこっちゃア無ェよ。顔が厭なら腹か胸だな」
「・・・漸くん。君、四方や楽しんでるだろう」
「勿論?御前みたいな奴は甚振ってナンボだろォ?ほらァ、速く決めろよ、鴨ー」
「よし。仕方ないな・・・、胸なら30分寝かせろ。腹なら1時間だ。
 好きな方を蹴っていい、判ったな、漸くん!」
「・・・・・・・しみじみ思うが、御前、つくづく狂ってるなァ」

2P淀鴨
























生々流転


「バカじゃ、ないの。なんだよ。なんなの。も、わかんな、いって」
「うん。ああ。・・・なんだ。大丈夫だぞ。ウン」
「だいじょ、ぶ、じゃ、ない!ばか、ばか神!」
「・・・なん、で、このタイミング、なのよ。泣かすな、ボケ」
「お前らー・・・にはさ。ずっと言うべきだって、思ってた。変なやり方になったのは、謝るって」
「で、も、分かんない、っつの。いきな、り、こんなこと、言われて、さ。ビックリ、した、って」
「ビックリ、したよ。ビックリ、して、苦しいよ。・・・なんか、もう、苦しいよ!」
「苦しいよな。・・・当然だよな。ごめんなァ」

MZDとミミとニャミ
























有心論/ゼロセラー


「とどかないとどかないって、うわ言みたいに言うんだねぇ」
「うなされてんじゃない?アタマん中でさ」
「苦しいのかな。辛くて楽しい破壊ショードー?自慢できないよ、それ」
「あたしたちだけじゃない世界は、やっぱ、とどかない気がするな」

「こころ」
「うん、そこ」
「へんなのォ」
「変だね」

「どうしてこんなに、身体が壊れそうになるんだろう?」
「だって、あんたん中はあんただけじゃないじゃん。色んな奴が自由に住んでて、自由に生きてる」
「それは不幸なことじゃない。みんな、好きなように暮らしてる。でも、じゃあ、あたし達は?」
「あたし達はホンモノなんだよ。あたし達だけの、ホンモノ。ずっとね」

「なんだよ、自分だけ強いって言いたいわけェ?ばか、人間は弱くてナンボだぞ」
「あー、ハイハイ、儚いものは美しいよ。でも、強いもんに憧れるのだって当然の感情だよ」
「強いのは嫌いだね、あたし。だって後ろ振り向けなくなるじゃん。こわくて」
「そんなら。弱いのだってその場で身動きとれなくなるじゃん。不安で」

「・・・優しいもの見て暴力ふるうのが人?」
「飛躍。力は傷つけるものじゃない」
「・・・時々、信じられなくなるんだよね。知ってる筈なのに」
「疑うことも必要って、言ってたよ。あたしも、思うよ」

「遠いトコのみんなへ、あたしはとっても元気ですよっ」
「・・・届かないぞー。底の底だもん、生きてるの確認すんのも難しいってのにさァ」
「へへ、とどかないからね。だからこうやって心で手紙書いてんの、あたしは!」
「ったく。あんたもあたしもさぁ、相当ロマンチストだよ、ニャミちゃん」

ミミ&ニャミ















十夜炎上#if


「清爾、と謂う名を・・・御存知でしょう、学者様?」
「貴様・・・、今、なんと言った?」
「ええ、知って居なかったら此の場所が存在して居る意味が有りません」
「何故、・・・何故、その名を貴様が知っている!?」
「・・・好い御返事だ。IDAAと謂う機関の根底を成す人間の名は、此処にとって最重要ですからね」
「化物・・・!何処でその名を訊いた!?汚らわしい口でその方を語るな!」
「吠え面は似合いませんよ支部長殿?「白川清爾」、が余程、御大事な様で」
「馬鹿なことを・・・!白川殿の功績なくして、この研究所は存在しない!敬うのは当然だ!」
「・・・ヒトの尤も劣悪な処は過去の人間を間抜けな迄に美しく仕立て上げる事だ。
 アンタは白川の何を知ります?遺された書物の言ノ葉をなぞっているだけでしょう?」
「・・・何が、言いたい。暴くべき真実を覆い隠しているのは、貴様の方だろうが」
「御判りに為りませんかね」
「貴様の言葉など、理解しようとも思わん」
「・・・為らば、単刀直入に申しましょう。あたしが、白川です。嘗てのね」
「なん・・・だと?」
「IDAAの設立理由と成る淀川の正体を刻銘に記録した白川資料を作り上げ、
 志半ばに其の淀川の手で殺された白川は・・・アンタの目の前に居るあたしだ、と謂う事です」
「・・・‥は、何を言い出すかと思えば・・・!そんな戯言を、私が信用するとでも思うか!?」
「事実は、事実にしか成り得ません。アンタも疑問に思った筈だ、
 異界の化け物が異能や淀川に関して何故此処迄の知識を持っているのか、と」
「茶番だ・・・貴様のどの一滴が白川殿に見合う?あのお方と貴様が同一人物だと?笑わせるな!」
「・・・学者様。己を偽ろうと、無駄な事です」
「何が、偽りだ!私は・・・!」
「アンタは知って居る。あたしが白川でさえ有れば凡ての辻褄が合うと」
「知らん!心血を注ぎ、後生の我々に貴重な資料を残して下さった白川殿を、
 貴様が騙ること自体どうかしている!貴様はただの異形だ、辻褄など!」
「・・・心底、愚かですな。己を妄言で覆い隠し、何が得られます。自尊心ですか?人品ですか?
 アンタが一言認めさえすれば、生きた「白川資料」を知る事が出来ると謂うのに」
「・・・・・・これ以上、貴様の汚れた言葉で白川殿を愚弄するな」
「考えれば、判る事です。施設にとっての利益。娘が持つ異能の統御。
 行き詰った其れ等の打破を、誰より求めているのはアンタ自身に他為らない!」
「貴様は舌先三寸の二枚舌で真実を覆い隠してきた。今更、貴様から産まれる連なりのどこに、
 真実を視ることが出来る?何を信じられる?・・・いい加減にしろ!」
「そうやって、背け続ける御心算ですか」
「・・・黙れ。私は、心より白川殿を尊敬している。
 それを土足で踏み荒らすような真似をするな。しないでくれ。私を欺き、何を楽しむ・・・!」
「やれやれ・・・己の枷に囚われる事ほど虚しい事は無いと謂うのに・・・。
 アンタが欺きを求める限り、アンタは自らの愚かさから逃れる事等、出来ませんよ」

淀&鴨川















横道しょっとはーと


「お前は面白い男だなぁ!ここまで奥行きのある生き物と出会うのは久しぶりだ」
「・・・下らナい御世辞は結構ダ。君は見た目と違っテ、随分饒舌に喋る」
「そうか?・・・なるほど、拙者はそんな寡黙に写るのか。
 ならばじっと黙っていた方が侍らしい格好になるだろうか、パロット?」
「僕に訊カずとも自分で答エ位出るだロう?他人は他人を、決して理解出来なイ」
「寂しい事を言うな。この世は悲しいことに溢れてるが、それだけで世界が造られている訳じゃない。
 人と人は、それ程捨てたものじゃあないぞ。だからそう構えるな」
「・・・・気楽ナ旅人だ。僕にハ考えラれない、ただの戯れ言でしかナいな」
「これまた捻くれている奴だ!どれ、拙者がひとつこの身で判らせてやるのが良いか?」
「う、触ルな!僕は僕ノ生き方を貫クと言ってイるだろう、こノ狐!」
「ははは!そうやって感情を露わにすることが大事なんだ。
 ・・・・頑なに心を塞いでいては、何も見えなくなる。そうだろう?」
「・・・・・・誰モが君のヨうに生キられる程、お目出度くはナいと思うガな」
「パロット。人は弱い。だからこそ、己を奮い立たせて生きていかなければならない。
 お前も、拙者もな。別に、強い生き物になる必要などない。前を見据えることが、大事なんだ」
「・・・・君は、心底不可解ダ。どうシて、そんな言葉を容易ク吐ケる?」
「・・・・、拙者は、美しいものも、汚れたものも、見すぎてしまったのだろうな。
 だから、この世界を丸ごと愛するほか無くなってしまった」
「・・・・・・‥。・・・・やハり、僕は、君ノように生きらレるとは思えなイよ、・・・イナリ」

イナリ&パロット















夜半開団


「僕はただの、しがないアイドルグループのリーダーですよ。
 神が僕をここに連れて来たのは、恐らく何かの間違いです。ですから・・・、」
「そうか?随分と凶暴な眼をしている様だが、それは唯の飾りかね」
「それは、・・・貴方が恐ろしいだけです」
「・・・おかしい事を云うな、人間。私を畏れる?」
「貴方を含めた3人は、人間・・・とは、異なる生き物でしょう」
「だから如何した?それをお前は単純に畏れと受け取るのか?」
「当然です!人と違うものに怖れを抱くのは至極当たり前の感情・・・!」
「人間。お前は己で理解する事なく「地獄」を与えろと、まるで軽々しくあの男に言われた。
 それは・・・あの男が神の眼を所持しているが故に、命じた事だろう」
「いきなり・・・何を言い出すんですか?」
「百々のつまり、お前は我々と同様の物を持ち合わせているのではないかな」
「は・・・・・・?似た、もの・・・?」
「喩えば狂気。喩えば闇。或いは破壊衝動や被虐欲、・・・深い哀しみと名付けてもいい。
 あの男は非常に賢い。安易に、人間を暴虎の領域に踏み込ませまい」
「ちょっ・・・僕は普通の人間ですよ!?変な勘ぐり方をするのは止めて下さい!」
「真の感情を覆い隠すは、些か難しい事だ。なあ人間。大人しくこの状況を愉しんでみてはどうだ?」

ウーノ&ヴィルヘルム















ビリヂデンフォレスト


「へェ、まだ匿っているのか、バウム」
「・・・テメーかよ。なんの用だ、見世物じゃねェぞ」
「見世物のようなものだろう。おまえがヒトを隠しているんだ、可笑しくない筈がない」
「仕方ねェだろ。まだ相方が見つかってねェんだ。テメーが口出しするコトじゃねェだろ、フィリ」
「わたしは興味があるんだよ。森に迷い込んだヒト、だろう?
 中々愉しそうではないか、おまえが必要以上に構うのも無理はない」
「好きでやってんじゃねェよ。野放しにすりゃあ、バカみてーに遭難するだけなんだ。
 ンなら首輪付けてでも家に放りこんで監視しとく他ねェだろ」
「・・・随分大事にしている事だ。熱いな」
「・・・下らねェこと言うヒマあんならそのご自慢の羽根で相方を捜してくれよ。
 アイツのお守りをしてるオレの身にもなってくれ」
「わたしが?おまえが招き入れた客だろう。おまえが面倒を見なければ」
「じゃあ突っかかってくんなよ。興味ホンイでヒトの問題に首つっこむな」
「自由に生きているのでな。・・・まぁ、確かにこれはおまえの問題だ」
「ったくよォ。精霊さまはイイよな、お気楽で」
「わたしにはわたしの苦労があるのだよ、バウム。
 ヒトは弱い生き物だと訊く、これまで以上に甲斐甲斐しく介抱してやれ」
「言われなくても充分苦労してるッつーの・・・、
 あのいつまでもウジウジした煮え切らねェ態度!限界だよ、オレ」
「ははは、おまえを困窮させるとはヒトも中々やるな。やはり可笑しいよ、バウム」

バウム&フィリ















図書閑話


「え?何、言ってんの?」
「ですから言っているでしょう。僕はこの場所で生きているんです。君とは関係のない場所でね」
「え、だからさ、それが分かんねぇって言ってんの、どしてこんなとこに、ひとり?」
「それは、そう定められているからですよ。
 見たことはないのですが、ここの管理者に、そう定められているんです」
「は?見たこともない奴に決められてこんなトコにいる!?ええ!?何、それ!?」
「・・・何度も言っていますが。館内は、お静かにお願いします」
「だっ・・・て、どう考えてもおかしいじゃないかって・・・だだっ広いし、来る奴なんていんの?」
「第一に、君がいますね。他にも迷い人が時折、入り込んできますよ」
「・・・それは、なんつーか、ここが目的じゃねーじゃん・・・」
「でも君はここが目的でしょう?」
「・・・え。そうなの?」
「そうですよ。好き好んで此処へ人が来るのは2年ぶりですから」
「・・・ハァ!?に、2年ぶり!?ばっ、バカじゃねーの、あんた!!」
「・・・・・・ですから。館内は、お静かに!」

エッジとミシェル















暗闇チョップ!


「ぎゃあああああぁぁああああああああああ!!!!!く、暗い暗い暗いッ!
 馬鹿な冗談は辞めろ漸くんッ、い、い、い、今すぐ電気をつけたまえ!!!」
「五月ッ蝿ェ蛆虫は何処の何奴だ、鴨ォ。
 昨期から遣ってっけど点かねェぞ木偶の坊。大方元が死んでるんじゃ無いのかねェ」
「な、な、な、何だと!い、い、一体何がどうしたと言うんだ、ま、ま、まったく・・・!!」
「あからさまに動揺するんじゃねェよ。俺が照らしてんだろォが」
「き、君の光は余計に暗さを引き立てる!駄目だ!下がれ!は、早く電気を・・・!」
「おーおー、随分殊勝に頼むじゃねェか。暗がりは下手なのかい、鴨川さんよ」
「そ、それは僕の問題だ、君には関係なかろう!近づくんじゃない邪魔だっ、暑い!!」
「吠えるなァ。闇はこっちの領域だぜ。ヒト如きにそれを質されて堪るかよ、なァ?」
「・・・は、ははは、何をそんなに楽しそうにしてるんだ、君は・・・・・・」
「お前が一番好く判ってるんじゃア無ェのか?御楽しみだろ。
 ・・・・俺はお前と違って、闇で戯けるのは慣れてるぜ」

2P淀鴨

























  Back