そのもの


「不思議ね」
「不思議、ですか」
「ええ。本当はあなたが一番、彼のそばに居るはずなのに。いつも錯覚してしまう」
「・・・僕は、そんなにあの人の近くにいません。あの人の一番傍にいるのは、ミミさんやニャミさんです」
「・・・そうね。あの二人は多分、彼にとってとても特別なんでしょうね。わかるわ」
「話していても、あの人は彼女たちを想う色を出しています。判りやすいんです」
「そうなの?彼らしいわ。あの人は、好意を隠したりなんかしないものね」
「そうです。あの人が誰かを好く気持ちを隠すことなんて出来ません。まぶしいですよ」
「私ね、あの二人が羨ましい、っていつも思うの。贅沢ね。私だってずいぶん彼の近くにいるのに。どうしてこう思うのか、自分でもよく分からないのだけど」
「僕は根本的に彼と同じ場所にいます。けど、やっぱり、彼女たちは特別なんだと思います」
「あなたから見ても?」
「僕が見るからこそ。・・・僕も彼女たちを不思議だと思うんです。あんなに綺麗なこころの音を僕は聴いたことがありません」
「彼の愛を体現してるのよね。私もすごいと思うのよ」
「・・・ああ、そうか。彼女たちは、あの人の産み出した愛のそのものなのかな」
「そのもの?」
「創造主としてあの人が生きる中で、愛をまるっきりそのままこの世界に落として出来たのが彼女たち」
「・・・ちょっとおとぎ話ね。彼がそんなにうまくやるかしら」
「やらないと思います。あの人、いい加減ですから」
「でもそうだとしたら羨んでもしょうがないわね。敵いっこないわ」
「そうですね。そうじゃないからこそ、羨むんですけど」
「あら。あなたもなの?」
「もちろん。なにしろあの人そのものが愛情なんですから。それを感じたいと思うのは、当然ですよ」


マリィ&いぬ千代



















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