御覧、光を


「空はね、広いのよ。どこまでも、どこまでも、続くのよ。」
「限りない世界ですね。ここを窮屈だと思う貴方には、丁度いい広さなのではないですか」
「ええ、勿論。アンテナ屋さん、こんなにちっぽけなこの地上を、空は憐れんでいるのだわ。」
「おや。・・・見守っているのではなく?」
「アンテナ屋さん?いつも思っていたけれど、アナタは少し優しすぎるのね。空はいつでも、私達を嘲笑っているのよ。」
「そうでしたか。僕は、空が様々な色を見せるのは、僕らを愛しんでいるからだと思っていました」
「いとしむ。・・・面白いことを言うのね。それは何故?」
「何故?・・・自然に存在しているものがああやって数多に変化する事によって、僕らはその変化を学ぶでしょう?」
「そうね。幾ら空が私達を憐れんでいても、私、空のムラサキは、好きよ。」
「それを学ばせてくれる、という事は、そこに愛情というものが存在していると思ったのです。愛情なくして、学びは成立しませんからね」
「・・・ふうん。少し、面白いわ。あの色を、空が、私達に学ばせている。」
「ええ、そうです。確かに空は広すぎて、僕らはちっぽけに見えますが」
「アンテナ屋さんは空を美しいと思う?」
「僕ですか?ええ、それは、勿論。この夕焼けだって、素晴らしい」
「・・・そうね。真っ赤だわ。眩しくて迷惑だけれど、あんな色は、ヒトには出せないわ。」
「嘲笑っているでしょうか?空は」
「私達を?変わりなく?」
「ええ。こんなに優しい色を見せているのですよ?」
「・・・私を誘導させたいのね、アンテナ屋さん。やっぱり、アナタは誰にも、優しすぎるわ。」
「そうでしょうか。自覚はないのですが」
「まあ、憎らしい人。でも、たまには悪くないかもしれないわ。」
「おや、それは何故?」
「・・・愛情なくして学びはない。それならアナタが今私に与えているものは、愛情のカタマリでしょう?」


トラウマミミ&トラウマニャミ





















2009


「・・・あ。・・・兄さん」
「・・・おう。あけまして、おめでと」
「おかえりなさい。父さんには?会った?」
「会えるわけないだろが。こっそり顔、出してんだ。どうだ?蕎麦、出たか」
「うん。今年・・・あ、去年も大繁盛だったよ。みんなみここちゃんトコの神社へいくって」
「ああ・・・確かにすごい行列だったな。お前は?」
「お店片づけて、父さんと年始のあいさつして。それで朝、神社にいくよ」
「そっか。・・・親父、何か、言ってたか?」
「『早く帰ってこいバカ息子』。いつもとおんなじ」
「・・・新年早々、暗い話、だな」
「うーん。父さんはもうなんかアッケラカンとしてるけどね。本音は兄さんの好きなようにやればいいと思ってるんじゃないかな」
「・・・そうか」
「うん。お互いムダにガンコなのはとっくにわかってるし」
「お前は相変わらず、その顔でキツイなー・・・」
「そう?」
「・・・うん。ま、うん。そのうち。顔、出すよ。オレも来年は卒業だし」
「そうだね。ぼくは待ってるから。気軽に、こうやって、帰ってきて」
「ああ、分かった。ごめんな。ありがとう」
「うん。あ、そうだ、これ」
「?」
「うちのそば。父さんの味。食べてよ、年越しそば」
「あ、ああ・・・悪い。ありがとう。蕎麦、か。家出てから、食べて、ないな」
「あはは。やっぱり、ガンコだ」
「・・・ははっ。そうだな」
「・・・あけましておめでとう、兄さん。2009年が、兄さんにとって良い年になりますように」
「ああ、明けましておめでとう。今年も、よろしくな」
「今年もよろしく。お互いに、一生懸命、がんばっていこうね。」


そばっ子&カツっ子





















死の排他


「・・・そうですね。私は貴方に、焦がれていますよ」
「・・・そんなにあっさり、認めるのか」
「何故です?」
「お前が、愛をそう扱うとは思っていなかった」
「心外、・・・ですね。私は私の望むがままに生きていますよ?貴方の理想と違ってね」
「お前は僕に何を求めている」
「貴方に?私が。」
「そうだ。・・・僕がお前に求めているものは知っているんだろう?」
「・・・ええ、震えるぐらい、鮮明に」
「ならば、どうしてそんな真似をする」
「『そんな真似』?」
「そうだ。何故、すべてを僕に委ねようとする?」
「・・・貴方が仰ったままの理由、ですよ」
「僕が言ったままの、理由」
「ええ。私の感情を愛と認める、という。その通りの」
「・・・・愛」
「貴方になら。何をされても良いんです、私は」
「愛の、名の元にか」
「私は貴方が思うより、酷く脆弱なんですよ」
「その感情で壊れてしまうほど?」
「・・・はい。だからこそ、同じように脆い愛でこの存在を確かなものにしようとするのでしょうね」
 貴方のぬくもりが、私を救うたったひとつの蜘蛛の糸だと。そう、妄信しているのかもしれません」


コナンニャミ×奇妙ミミ





















ぐだぐだ


「ミルク」
「ンっ。あっ、明美。相変わらずちっちゃいな、アンタ」
「喧嘩売ってんでチュか。まーた甘いもの食べて。それじゃ虫歯になるでチュよ」
「うるっさいなー。甘いモノはあたしの生きがいだもん。やめられるワケないじゃーん」
「あーあ、キャンディーにチョコにいちごミルク・・・歯科助手とは思えないダラクっぷりでチュね」
「アンタも食べる〜?おいっしいよー♪」
「結構でチュ。ネズミが虫歯になったら終わりでチュから」
「そーいやアンタ、ネズミなんだよねェ。ネズミも虫歯、なるんだ」
「なりまチュよ。別に、ヒトとかネズミとか関係ないでチュ」
「へー。まぁネズミのくせに歯科助手ってほうがヘンだけど。食べる?」
「要らないって言ってるでチュ。それに仕事だってミルクより真面目にやってるでチュよ」
「ケンカ売ってんのぉ?」
「ジジツ、でチュ」
「ま、あたしの第一目的はステキなダーリン探しだからいいけどさっ。明美は何、カレシいんの?ネズミ?」
「・・・」
「なによ。黙るなっ」
「・・・強いていうなら、ネコに追っかけられてるでチュ」
「はぁ?ネコ?」
「でも彼氏じゃないでチュ、天敵でチュ・・・」
「まぁ、そりゃ、ネコならねぇ・・・いやー。アンタってほんとヘン」
「ミルクに言われたくないでチュ。前から気になってたけど言うでチュ、何でチュかその制服はっ!」
「え〜?チョーかわいいじゃん。友達に作ってもらったんだぁー。ピンク〜♪」
「ピンク〜♪じゃないでチュよ、いいんでチュか、自作の制服なんて!」
「院長センセもいいって言ってくれたもん。何、うらやましいの〜?」
「なっ、な、な、そ、・・・そ、そんなことないでチュ!」
「アンタもピンク好きそうだよねぇ〜・・・欲しいなら作ってくれるように頼むけどぉ?」
「・・・・」
「どぉ?おねーさんに言ってごらん?」
「しょ、ショージキ。ほ、欲しいでチュ。ピンクの制服、憧れでチュ」
「ったくスナオじゃないんだから。オッケー。いいよ。でもそのかわり、お菓子食べても文句言わないでよね?コーカン条件」
「・・・ミルク」
「なによぉ、明美」
「あんたってホント嫌なオンナでチュね」
「ソレ、女からいつも一回は言われるからもう慣れちゃった。明美、アンタもソートー、ヤな女だよ」


小山明美&ミルク





















777!


「ポッキーもいいフウフも逃してさァ。これでいいの、あたし達?」
「・・・んじゃ、だからって今日に何をしようというのですかニャミくん。別にゾロ目でもなんでもねーし」
「んんん・・・アンタはいつも痛いトコつっこんでくるな。うーん。1211。胃に良い日」
「なんだソレ・・・苦し紛れすぎるだろ。あたし達がピロリだのシロタだのではしゃいでどーする」
「だよねェ。あたしもさすがにLG21をきどるのはどーかと思った」
「別にそんな暴れなくてもいいでしょ。何?神にでも唆された?」
「・・・なーんとなく!何でもない日ばんざーい、って言うでしょ?アレアレ」
「いい歳してアリスかい。アンタがイカレ帽子屋であたしは時計ウサギで、ダレがアリスよ?」
「・・・ダ、」
「うわっ!わー、ナシナシ。ありえないちょっと黙ってよねこのバカネコ。喧嘩売ってんの?」
「だーって乗ってくんないんだもん。記念日気取ってさー、はじけたい日もあるじゃんか」
「あるの?」
「あるのー」
「ん。じゃ、こうしよう。1211。そんなら、全部足して5。111がみっつあるから、3つならべて555。ホラ、記念日ちっく」
「555?ラッキーファイブ?サマになんないなァ」
「じゃあ、そこにいっこずつ、余った2足せばいい。そしたらお見事ラッキーセブン」
「・・・ミミちゃん。あんた、頭いいな」
「だろ?なめんな」
「参りました。ウヨキョクセツのラッキーセブンの日、お見事っす」
「なーんか結局どうにもなってない気、するけどね。いーんじゃない?せぶーん」
「セブンっ、ってね!イイ、イイよーミミちゃん!なんか今日を楽しめそうよ!」
「はいはい、何より何より。何でもない日、ばんざーい」


ミミ&ニャミ





















ヘヴンヅ


「・・・お前か。どうだ、私にもそろそろ飽いた頃だろう」
「俺はそんなに飽くことってしねーんだ。あんたはいつまでも失いたがってるようだけど」
「そうかね?」
「そーさ。あんたはちゃんと、あんたが殺さなくっちゃあ」
「・・・私が私を?」
「そう。彼に殺されるのも嫌、違う道を各々進むのも嫌。それならあんたがあんたの始末をつける、っつのが道理でしょ」
「私は現在の形で緩慢な死へ向かっている。自らをそう仕向けている。お前の言う事を、私は成しているが?」
「それは肉体の話でしょ。俺が言っているのは、存在のはなし」
「存在。私の」
「存在。あんただけの事ね、彼は関係ないよ」
「再三だが云わせて貰う。・・・私個人の価値を見出してどうする。奴なくして私の存在は語れない」
「でも、彼は彼自身って個人を見出しているだろう?感情という好意を媒体にして、さ」
「・・・お前は未だ、私そのものの意味を掬い出そうとしているのか。下らん」
「そんな怖い顔しないでよ」
「するさ。お前は何時まで経とうとも私の生命を理解しようとしない」
「節介するわけじゃないけど、勿体ないんだよなァ。「半身たる生」を潰すのはさ」
「半身たる生」
「そ」
「お前は完全であるが故に不完全さへ憧れているだけさ。それは唯の錯覚だ」
「それでもあんたたる肉体と精神はあんただけの物だ。ご存知?」
「存じているからこそ、私は完全を望むのだよ、少年」
「ふーン。そんな綺麗な羽根があるのに」
「ガラクタさ」
「そんな綺麗な輪っかもあるのに?」
「いびつだろう?」
「天使さま」
「何だね」
「完全を望むなんて愚かな話さ。だって、あんたの焦がれる天使だって、神が作り給うた未完成品なんだから」


エヴァミミ&デビルマンニャミ





















残像廻廊


「光。海。誰のもの?」
「心。命。誰のもの?」
「知らない」
「知れない」
「わたし達、自由になんてなれない」
「わたし達、離れることもできない」
「シアワセ?」
「ふ幸せ?」
「知れない」
「知らない」
「でも、」
「だから、」
「わたし達は、わたし達で居られる」
「いつまでも、いつまでもわたし達のままで」


ν&μ





















素面の恋


「セバス」
「・・・・・・テン?」
「君は、僕のことをどう思っているんだい?」
「・・・快活で無鉄砲でこの上なく面倒な友人」
「友人?」
「何だよ、そのじつに不満そうな目は」
「・・・いや、僕が君に抱いている感情と大分異なっていたもので、さ」
「はぁ?お前、まさか俺達がこ、」
「・・・親友、だと。僕は思っていたんだけどな?」
「・・・、・・・・・・嗚呼、そうかい」
「セーバス」
「何だよ、テン。嬉しそうな顔だな」
「是非とも、もう一度言ってくれたまえ!」
「・・・わざとやったな、お前」


セバス☆ちゃん&カウント・テン





















午後の趣


「おい蜘蛛」
「ロキ様。何でございましょうか」
「これは、何だ」
「は?」
「これはなんだと訊いている!」
「え、あ、あの。紅茶の葉、で、ございますが」
「妾が持って来いと命じた物は薬草だけだった筈だが?」
「・・・いえ。その。ダイアナ様が是非に、と、仰っていまして・・・、」
「黙れ!」
「ろ、ロキ様」
「下らん物を屋敷に増やすな!唯でさえ物ばかりだと云うのに、貴様はこれ以上無駄な物を増やす気か!?」
「し、しかし、ご厚意で頂いたものですし、紅茶ならば私が淹れますので、ロキ様は、その」
「・・・貴様が?茶を?淹れる?」
「は、はい」
「茶の淹れ方を妾が教えたか?出来もしないことを云うな、愚図が!」
「そ、・・・だ、ダイアナ様に、教えて頂きましたので、ご安心、下さい」
「・・・ほぉ、ダイアナにか」
「そ、そうでございます。ダイアナ様は丁寧に教えて下さいました、大丈夫です」
「・・・成程面白い、そこまで云うなら淹れてみろ!特別に飲んでやる」
「・・・はい。畏まり、ました。只今お淹れ致します、ロキ様」


ロキ&蜘蛛





















泣き笑う


「ん」
「・・・あ」
「やぁ、お久し。海?きれいでしょ。俺、「海辺の家」って憧れだったのよ、だから海」
「海、ですか。僕らの街には、ありませんでした」
「そうだねー。見渡す限り屋根のジャングルだったな、あそこは」
「・・・そうです。あまりに窮屈でした」
「でも、海は広大すぎてね。狭すぎんのも広すぎんのも問題だよなぁ」
「・・・・広い方が幾分ましでしょう。幾らでも、何処へでも、逃げることが出来る」
「・・・。「お嬢さん」が心配かね?」
「貴方の庇護のもとならどんな人間でも安心できます。僕はただ・・・」
「ただ?」
「彼女が一度死んだ時、僕は彼女を見つめていただけでしたから」
「愛する人が死んだらジサツしなけりゃなりません、ってか?やだねぇ、辛気臭いことは言わないでくれよ」
「・・・彼女は、僕と共にゆくことを望んでいましたよ」
「まだ言うの?お嬢さんもあんたも、大概の死にたがりね」
「ええ。・・・ですから。僕は、そうあるべきだった僕を望まなければならないのです」
「ふーん。過去のお嬢さんへの贖罪ってか」
「そうですね。僕らは変われないのかもしれません」
「ええ?残念。変わらないものなんて、ひとつもないよ」
「・・・貴方、以外に?」
「おお。あんたも、中々。冗談も言うのね。びっくり」
「・・・貴方は、僕らには眩しすぎます」
「そんなことないよ。俺にとっちゃ、あんた等の方がよっぽど眩しくて、美しいよ」
「・・・・・・」
「嘘じゃないよ、ほんと。そう、泣きながらでも笑っちゃうぐらいに、あんた等はきれいで素敵だ」
「・・・貴方が言うと、まるで真実のようですね」
「だって真実だもの。俺が見るすべては」
「・・・僕らは、素敵で美しいですか」
「ああ」
「眩しくて、きれいですか」
「そう、本当にね」
「・・・可笑しいなぁ。本当だ。泣きたいのに、貴方を見ていると笑ってしまう」


トラウマニャミ&MZD



















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