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砂上問答


「あー、あなたは。そうなんすか、ヘェ」
「お前な、言葉に濁るぐらいなら返事返さなくていいぞ」
「でも、なんか、なんつうか、カッコいいすねぇ」
「格好良さなんて下らねェだけだ。いいから、寝ろよ」
「いや、あなたの話面白いです。もっと聞かせてほしい」
「・・・・・面倒だ」
「あ、じゃあ、おれの話。おれ、話します」
「・・・・寝ろよ」
「おれは最初言ったように暗がり出て、放浪の旅・・・してて。アテがないっつんですかね。
 親は、死んじゃったし、兄弟もいない。家族っていえばこいつくらいのもんで」
「・・・カゲロウ、だっけか。言ってたな」
「ええ。ずーっと昔、北に居る小さい部族からもらったんです。
 キレイですよね。宝だって言うんです。言葉はわかんなかったけど、そんな感じで」
「そんなもん、どうしてお前に預けたんだ」
「・・・・・この宝、って、ひとところに留まらない宝ー・・・らしいんです。前は南にあったって。
 でもそこまでしか分からなくって、あとは意味が伝わらなくてですね。
 なんつうか、くれた族長さんはやさしい目?みたいなんでおれを見てましたけど」
「水晶の、揺りかごか。お伽話だな」
「どうなんでしょうね。見てくれはきれいだけど、こいつ、残酷ですよ。
 生きて死ぬってのを毎日毎日見ていかなくちゃいけないのは、つらい」
「・・・・面倒だな、まったく」
「でも、家族だから。おれの親父で、死んだおふくろで・・・姉ちゃんで弟で兄貴で妹」
「俺は全部捨てて、それっきりだ。思い出す気もねェ」
「強そうですもんねー、あなた。・・・・おれも、面倒がいやで荷物をしょうのはきらいですよ。
 南極だって、ほんとは半そでの手ぶらで行きたいし、あはは」
「・・・笑うのか、そこで」
「笑いますよー。おれは笑ってなきゃだめなんですから」
「面倒嫌いの割に、面倒な奴だな。お前は」
「あはは・・・・そうすよ。だから笑ってるんですよ。あなたみたいにおれは強くないですよ」
「いや、・・・そういう意味じゃあねェだろう」
「そういう意味すよ。分かりませんか?ね、分かると思いますよ」
「・・・・・・どうした、お前」
「・・・おれはこいつしか得ちゃいけない気がするって、前、話しましたよね。
 おれが思うにはおれも留まっていられないって思う。こいつとおんなじように、・・・、
 ・・・だから族長さんはこいつをくれた、『お前と同じだからお前と共に歩め』って言ってた、」
「何を・・・?」
「家族ができてうれしい、けど、おれは、それ以上求めちゃだめなんだ、おれは。
 だから求めないように、面倒も荷物もしょわないようにして、笑うんです。
 おれは、あんたみたいに強くないから、」
「・・・じゃあなんでここへ来た。俺だって何も求めちゃいない。お前がここにいる必要は無い」
「だからだ、だからです、あんたと、一緒だって思ったから、ばかみたいに、
 おれはあんたの後を追ってるんです!あんたみたいに強くないから、弱いから!
 まだ願ってる、ばかみたいに、ばかみたいに求めてる!」
「・・・もういい」
「・・・なんでですか、あんた、ほんとに、」
「寝ろ」
「・・・」
「判るだろう?」
「・・・あんたは、やっぱり、作りたくない、んですか」
「何がだ」
「つながりとか、そういうのが面倒で、あ、・・・なたはそうなったんだ」
「そうだ、初めに言ったろう?俺は全て捨てたと」
「捨てた」
「そうだ。だから、寝ろ。今すぐに」
「・・・・・それは、なんすか?どうして、なんで、拒否を」
「戒めだ。それ以上でも以下でも無い」
「戒め・・・?」
「何度も言わせるな。寝ろと言ってる」
「でも・・・おれ、は・・・、」
「寝ろ!」
「あ・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・おやすみ、なさい」

ファトカジ未満


















千夜座興


「あの人の手の中で踊るのは嫌いじゃない」
「・・・物好きね、あなたも」
「そんな事言って。君だってそうだろう?本当の所は」
「認めたくないのよ。私の生が、あの男の一部だって事をね」
「生まれ出でた喜びは素晴らしいと、君だって思って・・・」
「いるわよ。もちろん。それでもね、頑なになってしまうのよ」
「・・・なぜ?」
「あいつの記憶がそうさせるのだと思うわ。あの、耳が壊れる程の生命の叫びが」
「・・・・『罪をも抱け』と?」
「私はそれを理解したいとは思わない。理解できるとも思えないわ」
「でも、それはあの人の所為じゃないだろう?」
「そうね。けれど、あいつ自身の記憶が言うのよ。あなたの中には埋め込まれていない記憶が」
「分かって、いるよ。うん、・・・ごめん」
「・・・・・いいのよ、大丈夫。あなたは何も悪くないもの」
「どうしてだろう。どうして、あの人は君を選んだのだろう」
「あいつの母親だからよ、私は。・・・きっとね」

めばえ


















口頭弁論#2


「星の海を旅した夢、見たのよ。とてもね。とても、自由な夢よ。」
「・・・貴方も物騒でない夢を見るのですね。珍しい」
「ええ。見るのよ。美しい夢よ。ただただ、美しい夢よ。」
「純粋で清らかなだけの夢ですね。貴方に似合う」
「私に似合うもの、貴方は何から何まで存じているもの。私、すっかり分かっているわ。」
「絶望?嘘?つぶれた身体?そんなものを並べたって仕方ない」
「全ては必然でしょう?アンテナ屋さん、貴方こそ何もかも分かっているのに。」
「僕は貴方のように敏感なそれを持っていないものでしてね」
「これはね、とても便利よ。味気ない世界のどれをも受信できるのよ。」
「そしてどれをも破滅に導く?」
「それは私の純粋で清らかなだけの夢だわ。アンテナ屋さん。」
「なるほど。だからこそ、貴方の世界は」
「その通りなの。ほら、すっかり分かってるじゃない。」

釈迦


















同点決勝


「・・・ねぇDJくんさー。これ書類不備じゃない?」
「へ?どこがすかー、ニャミさーん」
「だってさー、コレ一人二役って書いてあるじゃん。でもさ、この参考写真ふたりいるじゃん。」
「あー。それっすかー。それはねー。あー・・・合成?みたいな?」
「・・・なんか怪しいね、キミ」
「えー?やーそんなことないっすよー、あはははー」
「ま、いいけどね。来る者拒まずは神の意思だしさ。おっとー、ミミちゃーん」
「はいはいはーい、なにかねニャミくん!」
「はい博士ー。こちら受理いたしましたー」
「うむ結構!キミは自分の仕事に戻りたまえー」
「りょうかーい」
「と、じゃ、OKすね?向こう戻っちゃっていっすか?」
「あい、いいよー。じゃ本番がんばってねぇー」
「うーす!ありがっとしたー」
「バイバーイ」
「おお行ってしまった。元気だなー」
「・・・・むむむー」
「ん?なんか変な目しとるよ、ニャミちゃん。DJ少年になにか問題でも?」
「あの目は嘘ついてるなーと思うわけよー、あたしはー」
「あーこの写真?どーれどれ・・・うわーほんとだ、二人いるね」
「神が連れてきたときは半分だったじゃん。縦まっぷたつでさー」
「そーねー。あれは最高のギャグだと思った、最初」
「爆笑したもんなー、あたし達」
「でも歌もパフォーマンスもすっごい良かったじゃん」
「うーん・・・それはあたしも思った。けどさー!この写真が!気になんの!」
「ぎゃ、そんな押しつけないでってば、くすぐってー、あひゃひゃ」
「っかしいなぁ・・・ぜんぜん違う顔だしよー。格好は・・・まぁどうにでもなるけど」
「もー、そんな気になるなら神呼べばぁ?」
「だってあのグラサン忙しいって・・・」
「呼んだ?お悩み猫ムスメ」
「・・・!うっわっ!びっっくりしたッ!いきなり現れんなアホ神!!」
「あらまぁ神サマ。お仕事の方はよろしんで?」
「ま、なー。俺、悪口には敏感なのよー。エヘッ」
「エヘッじゃないっつの。ま、いいや。とにかくこれ見てよー、つよしの写真っ」
「なんか二人いんのよ。神はコレ知ってる?」
「んー?なんだ、二人いるじゃねーか」
「だから今言った。」
「・・・・だめだ、この人当てにならねー」
「まあ待て猫兎ども。こりゃ単純に分裂したと見るな、俺は」
「・・・・え?なに?何つったこの人」
「分裂?・・・いや、あんたの物差しで人を見ないでくださいよ・・・」
「いやいやマジだって。そんな匂いするぞ、この写真よー」
「あ、もしかして他から連れてきた誰かってこと?」
「ああ、なるほどねー。っても、そんなら最初から二人で来るっしょ」
「そういうこった。んー、この写真、表面をただ映したって感じがしねえしなぁ」
「ん?ひょうめん?」
「だって、写真てそういうもんじゃん」
「あー、なんつか、心霊写真みたいな奴だな。霊のかわりに心の内が出ちまったよーなモンだ」
「んん?心のうち?」
「DJ少年は心の内側がふたつ?いや、ふたり?いるってこと?」
「おそらくー・・・な。今日はDJの格好だったんだろ?あいつ」
「うん。いや。でもあのギンギラ王子のカッコで来たらヒーローじゃんよ」
「ま、ここ日本ですし。」
「そりゃそうだが。そうするとDJのほうが本体ってことだろうな。多分」
「ほ、本体。なにやらむずい話じゃないか!」
「相変わらずニャミちゃん、ややこしい話もって来てくれんなぁ」
「でもそんな深く考えるこたぁないだろ。あいつがこの写真わざわざ持ってきたってことは、
 まーそういうことなんだろ。どうあっても二人なら二人で出るってか?くー泣けるねちょっと!」
「くー、ひとりで感動しないでよちょっと!」
「んー、結局確信があやふやっすね?MZDのアニキ」
「そうかぁ?俺はなんか余計面白くなったと思うけどなぁ・・・て、うわ、ちょっとお前、今何時?」
「地球時間でPM12:24。明日きてくれますかー。」
「いいともー。だいじょぶ?神」
「非常にまずい。俺行くわ。ちょっと火星で粘液待たせてんのよ。もう約束10分過ぎてる」
「なんと。喰われないように気をつけてねー」
「わざわざありがとねー」
「おーよー。じゃな!面白いネタあったらまた伝えろよ!」
「あいよー」
「バーイ」
「・・・・いっちまった」
「なんだかよく分からんかったよーな気もしますけど?ニャミちゃん」
「それも、そだけど。まあ、なんとなく・・・分かったー、かな」
「その写真、案外貴重なもんなのかもね。いい子じゃないか、DJくん」
「うん。あたしの目は間違ってなかった」
「最初ネタ歌唄わせてよーとしてたの誰よ?」
「それはそれ、これはこれだよ、ミミくん!」
「はあ。じゃタモさんでも見る?つよしくんの謎がとけたお祝いに。」
「そうね。この子の七つのお祝いに。」
「・・・はぁ?」

つよし、ミミニャミ&MZD


















硫化粘液


「・・・テメェ、何モンだ?クソッ、まだ口が気持ち悪ィ」
「グギギガ!ギグググガガガ!」
「喋れねェのかよ・・・ったく、喰えねェわ気味悪ィわ良いトコがねェなァ」
「ギャグガ!ガゴギギ!!」
「酷ェ声だな。森じゅうに響いてるような嫌ァな声だ」
「ガゼ!バゼギギギ!!」
「しかし何だ、オマエ?粘ついてる青いヤローなんて、見たこともねェぞ」
「ガガガガガガ!」
「ったく・・・、喰ェねェなら仕方ないだろ。捨てる」
「ギガグゲ!?」
「・・・ンな眼で見んなよ。・・・ジジィのトコ、連れてくか・・・」
「ガーギゲゲゲゲゲ!グガ!」
「・・・・・・そんなら、日が昇る前に行くぞ。目立つと不味いからなァ」
「ググググガゲゴゴア!」

バウム&Gelm13
























雪月一夜


「あら・・・何方ですの?こんな夜更けに」
「おお、すまぬ。一晩泊めて貰えぬか。友の援軍に向かう途中で日が更けてしまってな」
「・・・そのような事情でございましたか。どうぞ、お入り下さいな。粗末な処ですが」
「やあ助かった!恩に着る、娘殿」
「ごゆるりとお休み下さいませ。寝所の用意をして参りますわ」
「面倒を掛けて申し訳ない。なにか手伝うことはあるか?何かせぬと落ち着かん」
「いいえ、お構い為さることはございません。女一人身でも不自由はございませんことよ」
「ム、女子ひとりとな。それでは力仕事で苦労するだろう。どれ、なにかひとつ・・・」
「随分ご節介なさるお方ですわね。お力を養わなくてはならないのでございましょう?
 静養なさって下さいませ。わたくし、こう見えても力はございますの」
「そ、そうか。ム。すまなかった」
「いいえ。お気遣いはありがたく頂戴いたしますわ」
「・・・それにしても、女子一人とは。どうやって暮らして居るのだ?」
「お聞きになると思いましたわ。此方をご覧下さいな」
「なんと、これは見事な反物だ!お主が織っておるのか?」
「ええ。この職のお陰で苦労したことはございませんわ」
「ふむ。何とも、美しい・・・」
「処で・・・・お侍さまでございますの?先程援軍などと仰っておりましたが?」
「あ?あ、ああ。友の想い人が敵国に攫われてな。これが中々状況が芳しくない有様で、
 居ても立ってもいられずに独り馬を走らせてきたのだ。しかし、今度はわしがこの有様だ。ははは」
「まあ、そうでございましたの。それは大変なことでございますわね・・・・」
「今も向こうが苦戦してると思うとな、どうも気が急いていかん。
 明日は日が昇る前に出て行くつもりだ。ム。悪かったな」
「お気になさらないで下さいませ。内情にお触れするとはわたくしの立ち入るべき場ではございませんでしたわ。
 寝所もご用意も出来ました。そろそろお休みなっては如何です?」
「そうか・・・すまぬな。では、休ませて頂くとするよ」
「はい。お休みなさいませ、お侍さま」

獅子若&千鶴


















岩盤絶壁


「さあて。俺は鬼だ。化け物だ。斬るか、お前は」
「ぐ・・・・・」
「悩むか。それは、当然か?お前の真は村を守る事ではなかったか」
「貴様ぁっ!」
「おっと、これは禁句か。しかしな、俺の仕事はお前を知らない頃の俺が充分に話した筈だ。
 この世には決まった定めがある。俺はその定めの一部だ。抗う事の出来ない定めの、な」
「・・・・貴様の戯言におれが付き合うと思うか」
「俺は定めを司ってる訳じゃあない。むしろ俺は、その定めに操られているに過ぎない。
 それをお前は理解していよう?理解しているからこそ、俺を斬れない」
「黙れ、赤鬼!おれは貴様を斬る!何があろうと斬る!!」
「成らば斬るか?俺と村とをつまらん秤に掛け、尚悩みながら、お前は俺を斬るか?」
「貴様はおれの全てだ!おれの全てを奪った!!」
「・・・奪われた者は奪う権利が有ると云うか。復讐に囚われ続けるか。
 お前は数多の人間の恵みを潰してまで、その村と云う狭小な情を守るのか!」
「黙れ!黙れ、黙れ、黙れ!!おれの真は村だ!おれの真実こそは村だ!
 それを何より知っているのは貴様だろうが!村を侮辱するのは許さん!!」
「強気だな。動けぬとはいえ随分強情だ。今のお前は、赤児のように非力だと云うのに」
「ならば、殺せ!其程おれを嘲笑いたいのか!醜悪な鬼が・・・!」
「お前を嘲った処で何も産めぬ。自然の摂理がそうして居るまでの事だ」
「何だと・・・!」
「俺は天に命じられている。地を潤し、空を光らせ、稲妻を舞わせる。
 お前は己に命じている。村を殺した俺を斬り、村への弔いを掲げると」
「気まぐれな見解で時間稼ぎか!?おれは問うた覚えはない!」
「・・・その摂理の交わりで、俺はお前を捕えた。成らば、俺は委ねるしかないのだ。
 お前の苦悶の先を見届ける為、この自然を視るしか無いのだ」
「おれは、お前を、斬る!それ以外の理はない!」
「・・・それでも俺は、俺の仕事を続けなければならん。お前に斬られようともな」

DJ雷神&チノ


















懺悔賛歌


「先生。僕はいつか失おうと約束をしました。貴方とではなく、僕が尊びの上で持て成した誰かと」
「そうして、その余りに容易く失った約束の行方を憂いでいるのか。
 そうして、弾き手を獲ず、音をも失ったわしを蔑んでいるのか」
「そうなのでしょうか。僕は今、その失いを後悔しています。
 与えられない不幸が、捧げることのできない不幸が、僕の中で哀しい、哀しいと嘆いている」
「ここに生を齎された時から、わしのこの臓器は命を奏でたことが無い。
 それをお前は知っているだろう。わしがお前を知っている事実と同様に」
「知っています。僕が生まれた時から先生はここにいた。悪魔を宿した楽器として」
「悪魔か。わしが持つこの意思こそが、悪魔と呼ばれているのだろう。
 中に巣食う者など、若しかしたら大した事ではないのかも知れぬ」
「でも先生はお優しいです。僕に世界を教えてくれた」
「優しいなどと愚かな事を言うな。わしは孤独なのだ。孤独故に、記憶を捧ぐ事しか出来ない」
「僕は先生と約束をしたい。いつか失うと約束をした、誰かのように。
 先生が得ることの出来る約束を。与える、約束を・・・」
「与える、か。音を与える事が、素晴らしい事だとわしは知っている。
 お前がその約束を交わそうとするのは何故だ?」
「僕が、先生の音を聴きたいからです。そして、僕が先生の音を奏でて差し上げたいからです」

グランドハンマー&アルビレオ


















落下地点


「・・・戸惑いは?」
「無かった。・・・もういいだろう。自分の事なんて存在してるだけでもう沢山だ」
「でも!」
「お前が馬鹿みてェに俺を知りたい気持ちはよく分かるよ。
 こんな身の上、好奇を抱かれる以外には意味がないようなもんだからな」
「そんな意味で、聞いたんじゃないです!俺はあなたを知りたいんだ!純粋に!」
「それはどうしてだ。言い振る舞いたいからか。笑いたいからか?」
「分かち合いたいからです!あなたを、理解したいからです!」
「は・・・言うなよ。そんな無茶な事を。俺は俺で居ることにさえ、疲れたんだ。
 お前が理解出来るとは思えない。元々、人間なんて分かり合える生き物じゃないぜ」
「・・・・そういう理由で、あなたは、人であることを捨てたんですか?」
「さあな。今の姿になっても、誰かと分かり合えたことは無いな」
「あなたに『踏み込むな』という拒絶があるのは、俺にだって、分かります。
 けど、それでも俺は踏み込みたいんです。それは、何故だか、・・・分かりますか?」
「・・・理解は時に鋭い凶器にもなる。それがお前には分かるのか」
「はぐらかさないでください」
「・・・やれやれ。分からねえよ、兄さん」
「俺は・・・俺は、あなたを、愛したいんです。すべての意味で!」

ファットボーイ×カジカ


















口頭弁論


「わかっているの。人である私などに興味はないのよ。」
「仰るのですか。この期に及んで」
「愛している返答など求めていないと言いたいの。言いたいのよ。」
「強情な方だ。そうまでして求める労りなのか」
「慈しみと願いたい・・・それを知っているのよ。分かっているのよ。」
「あなたは死に給うことで、嫌悪を得られるとでも思っているのか!」
「好くなど虫唾が走る。けれど、あなたを好くことは出来る。」
「それならば何故だ。何故ぼくはあなたを好いてはいけない!」
「罵りと侮辱の思いこそ私が最後に求める愛情なのよ。」
「・・・ひどい唇だ。値などない舌だ」
「そうよ!その呟きで・・・・私は得るの!そう。救いを!」

釈迦

























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