きみは長文の王




る、8のお題

赤い花をかかげて君は無様に祈る

いつだって事実はかけ離れた言葉の
群れになってここを貪っている

白い雪の振る夜、チューバが吼える

サイレンの音は危惧ではなく安堵となって僕の胸に落ちる

見透かした眼は必ず2回瞬きをした後
やさしくこちらを射る

なぞり、描き、まわる

サイフォーンの姿は捕らえられたものが
騒ぐようなざわめきを思い立たせる

安らかな玩具を手にして眠る












きみは長文の王




る、8のお題 2

罵り吐き捨て奪い去る

轟々うなる汽車の窓
から腐食液を投げる

平面フラスコの奥、
一人と五匹は永久を傍観する

謝罪を並べ立てるゆがんだ君の顔を
僕は曇りガラスの向こうで見ている

ドミノとダーツの海で溺れる

すべてが終わったその後に
ひとり鼈甲を舐める

有機質と無機質の間を
徘徊したつもりでいる









きみは12の王









12ヶ月で12のお題

はじめましてこんにちは
しんしんと降り積もる
頬を桃色に染めて
うららか
ご陽気に散歩
点と線と円
青に身を染めよう
畑で背くらべ
実りに耽る
朽ちた枯れた
前ぶれと涕
ありがとうさようなら









きみは光の王









光る13のお題

滲む星
こぼれる宝石
暗闇にキラリ
ラムネの瓶
爪先のクリスタル
白熱灯と蛍光燈
集中砲火
奥底からの確認
嘘臭いメッキ
鳶色の瞳
煌きそのもの
死と閃光
過去、現在、未来









きみは暇つぶしの王








暇つぶし14のお題

プチプチのベッド
青空カラオケ
紫外線浴
猫と時事トーク
砂嵐テレビへ挨拶
母屋捜し
ある日は王様
幸福ごっこ
耽って浸って
オウム返し
取らぬ狸の皮算用
一人運動会
政治家きどり
時には大仏のように












きみはプラトニックの王




プラトニックで夢を見る18のお題

目の前のてのひら
合う目線
嫌いじゃない
そしてまた泣く
焦燥と躊躇
このまま死ねればいい
つつましく触れる
浅ましい空想
よく見る癖
得るもの、得られないもの
「ばか」
横やりの嵐
それでも構わない
なぜここまで痛いのか
ありきたりなふたり
伸ばせば届く
自己矛盾
ああ、すきだ









きみは探索の王










探す5のお題

君の白いゆめ
はんぶんに欠けたクッキー
ガラスの持ち主
檸檬と酒
唇五秒のラプンツェル









きみは佇みの王









佇む5のお題

田園地帯
好きといったその日から
曇ったミルク瓶
新世界協奏曲
話さないで









きみは の王









  7のお題

君、透明人間
空気より滑稽に
石ころ帽子
「お友達になれそうね」
嘘は良くない
見ず言わず聞かず
カーボン紙









きみは舌の王









舌6のお題

交じり合せて
味覚障害
嘘つきは泥棒の始まり
とりこ
粘ついた宴
欲望の海









きみは居の王









居る9のお題

御霊なる護り
黒い狛犬
広く浮き出たしみ
古ぼけた香炉
安心感
崇めよ、称えよ
昨晩の内に
煉獄迄
ずっとともだち









きみは砂の王









砂6のお題

星生きる海
蟻地獄
石像のなれの果て
噛む湿気
ざらりとうねる
無形の哀しみ









きみはひとの王









他人5のお題

隣の芝は青く見える
シナプス連結
皆兄弟
感熱紙のうえ
ふるえて、すすんで









きみは希求の王









求む6のお題

二百万べん願う意義
血反吐をはいた
強要、殴打、搾取
屍越えたそのさきを
背の暴虐
これほど、と刺し出している









きみは5つの王









5、5のお題

不堪するぼくら
愛、耐えがたい湖畔
意義の為の沈黙
撫し付ける
ごとりと彼女の首は落ち









きみは6つの王









6、6のお題

しあわせの白いかば
蕾蘭交
屈折する星霜
水銀灯の音が鳴る
ロンドンヴィレッジ
崩れる彼岸









きみは7つの王









7、7のお題

性のきまぐれ
分別不要の沈黙
Nは如何にして誘惑したか
名無しは用無し
ナーバスフォルテシモ
弛緩、嗚咽
散らばる姿態たち









きみは孤独な殺人者の王









或る話13のお題

「あたしを殺して」
青空生害
僕はスコップを取り出した
サクラノキノマンカイノシタ
遠く、日常の足音
ビルは人々を内包する揺籠
『君の声はいつでも土の底から聴こえる』
午後4時のニュース
億万の紙片、溢れた
翼が折れた飛行機になろう
罰をさし出す
まわる、まわる、わからなくなる
「あたしに逢いたい?」









きみは の王









境界の彼方10のお題

ちとなみだのわたしたち
柵と階
フライ・アウェイ
ここはばけものの国なりや
嗜好主義
もうかなしみの彩色はいらない
美しい選択
「うまれてよかった」
想う、想う、想う
秋に人の未来を夢見ていた