§ミズシマさんの
とっておき雑楽ノート§
(第六話)
〜ロンドンでシカゴ(Chicago)-英語は難しい〜
英語は難しい。
いつまで経っても上手くならない、
というか最近は耳が遠くなってきた上に反射神経も悪くなってきて、
言いたい言葉が出てこない。
明らかに下手になってきている。
ネイティブの英語人はよく会話やスピーチの中にジョークをかませるが、
これがまたよく理解できない。
今頃の流行言葉やスラグが入るとチンプンカンプンである。
4年前にロンドンでミュージカルの「シカゴ」を観る機会があった。
場所はアデルフィ劇場。
地下鉄のチャリングクロス駅からトラファルガー広場を通り、
200メートほど歩くと劇場がある。
「シカゴ」はもちろんブロードウェー発。
鬼才ボブ・フォッシーの演出で1975年初演され、
一度は中断したものの今もロングランしている人気ミュージカルである。
ロンドンでは1997年からスタートし、
本場以上に歌唱力が高いといわれるスター構成で今に続いている。
物語は1920年代のシカゴが舞台。
一人は亭主を、
一人は愛人を殺した女二人が悪徳弁護士を利用して、
刑務所の中から芸能界にスターデビューするという奇抜な内容。
ネットで取った私のシートは舞台から2列目のほぼド真ん中。
かぶりつきといってもいいその席はステージの振動まで感じられ、
ダンサーの汗も飛び散ってきそうな迫力がある。
舞台は踊りと歌の中にコミカルな色気を交差させながら、
シカゴジャズをバックに早いテンポで進んでいく。
ストーリーの内容は大体理解しているつもりだし、
ダンスが中心の展開だから分かりやすいが、
それでも間に入る台詞は意味不明のジョークも交じり、
なかなかついていけない。
ギャグが入るたび、
隣に座った太目のイギリス人の男は体をゆすって笑いながら、
私の方を振り向く。
「おかしいだろう、お前も笑えよ!」ってな感じだが、
台詞についていけない私はその都度無理な笑顔で顔が引きつる。
こういう場合、
無理にでも笑わないといけないという雰囲気ができてしまってるもんだ・・・。
歌も良し、ダンスも良し、
これぞエンターテイメントといったミュージカルだったが、
イギリスのオジサンが振り向くたびに笑いを作った。
そんなわけで余分な気疲れをしたものだ。
ずいぶん昔だがスウェーデンのメーカーから、
エリアマネジャーのJ氏が来日した時の話。
エリアマネジャーというのはメーカーの地域担当者のことで、
何度も日本に来ているJ氏は、
大の日本通で日本料理と日本酒が大好きである。
社内での雑談の中(海外企業との会話は英語が共通語である)、
J氏の奥さんが大変な美人であるという話になった。
そばで話を聞いていた新人のS君。
何か言おうとしている。
「何だ、言ってみろ。」と先輩。
S君の英語外交デビュー、第一声。
「I want your wife.(あなたの奥さんが欲しい)」
「・・・・・!」一瞬場が凍った。
(どこかの国の将軍様でもそんな直接的な言い方はしないだろう!)
自分で動転したS君、慌てて言いなおす。
「I want to meet your wife.(奥さんにお目にかかりたいです)」
言い直したところで大体こういう一言は後がない・・・。
S君のほうへは顔を向けず、
憮然とした表情のJ氏、
「私はいいけど、妻は何と言うか・・?(英語部分省略)」
私はいいけどってほんとにいいわけがない。
内容が内容だけにだれもホローに入る者もいない・・・。
日本人だったらこう言われたらなんと返すだろう。
日本人的あいまいな笑顔を作っているんだろうか、
ほんとに差し上げますなんてことは間違っても言わないと思うが・・・。
奥さんが美人の誉れ高いとこういうハプニングも起こるんだろう。
夜の宴席でJ氏のそばに座ったS君、
恐る恐るJ氏に熱燗を酌する。
酌をするにぶすっとしたまま継がれた酒をあおる。
この夜のJ氏はいつも以上にピッチが上がった。
英語は難しい・・・ホントニ。
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