エッセイ
♪♪♪♪♪私の楽器物語り(2)♪♪♪♪♪
19歳のペーペーにとって120万円はとてつもない大きな金額です。
でも購入してしまった限りは自分の責任です。
毎月給料日になると支払い分の金額を残して銀行口座からお給料を引き出します。
安月給の身にはそれなりの負担です。
でもこの大きな買い物をした事で「これは決してムダにはできないぞ!」
と言う気持ちも生じて、
「何とかしてギターを続けて行かなければ」と言う思いが沸きあがって来た事も事実です。
私の手元に来たホセ・オリベは弦長が650mでボディも大きく、
キャリアの浅い私が抱えると一杯一杯という感じがしました。
材質は表面板が松で横板と裏板がローズ・ウッド、
指板が黒檀とギターの材料としては一般的な物です。
音はスペイン的な明るい性質の音ですが、
新しいという事もあって本当の「オリベの音」がまだ出ていません、
(もちろん、20万の楽器に比べると音量はあるのですが)。
先生の話によると、いい楽器は弾き手が長い間弾き込んで行って、
やっとその楽器の音が出てくるんだそうです。
私の場合ギターを習い始めてまだ3年目でしたので、
「弾き込む」と言う事がよくわからず、
それでも普段の曲のレッスンと「音の出し方」の勉強をする事になりました。
毎週木曜日には楽器を持って職場まで行き、
仕事が終ったあと当時レッスンに通っていた大塚のスタジオに向かいます。
先生の横で楽器を構え曲を弾き出すと、
「そんな弾き方じゃあ、いつまで経っても音は出ないよ」と早速厳しいお言葉…。
「右手の位置はサウンド・ホールの真ん中くらいで、
しっかり弦を捕らえて弾かなきゃ」と言って
オリベを手に取って弾いてみせてくださるのですが、同じ事を私がやろうとすると、
これが全くと言っていいほどお話にならない状況。なんて薄っぺらい音なんでしょう…。
「お上品に弦を触っているだけじゃ、音は出ないよ」と言われて、
挙句の果てに右手の構え方からアポヤンドの仕方まで、一からやり直すような始末。
「この形を忘れないようにね」と念を押されて帰って行きます。
新しい楽器は右手だけではなく、左手も弦を押さえるのに大変な思いをしました。
楽器の弦長が長いため指板が前の楽器よりも広く感じられ、
特にセーハをするのが一苦労でした。
そこで、左手の握力と右手の指の力を少しでも付けるようにと、
スポーツ用品店でハンド・グリップを購入して手を鍛え始めました。
「楽器を演奏するのにこんな事までしなきゃいけないのか…」
とスポーツが苦手な私は少々戸惑いながらも、
渋々と日々努力をするのでした。
はじめは三段階あるうちの一番弱い赤いハンド・グリップを使っていたのですが、
そのうち軟式テニスで使う「ゴムボールがいい」と言われたり、
ワイヤーをコイル状にした物を輪っかにした物があるからそれがいいと言われたり、
普通のハンド・グリップを小さいサイズにした物があると言われたりと、
いろいろ試しているうちにだんだん面倒くさくなってきて、結局、放り出してしまう始末。
「ギターの為とは言え、スポーツとは相性が合わないんだ」と悟ってしまい、
二度とハンド・グリップを握る事はありませんでした。
それでもギターの音作りと曲の練習は続き、
苦労しながらも何とか弾き続けて行きましたが、
思うように本当の「楽器の音」は出てくれません。
やっぱり技量が足りなかったんでしょう。
結局ホセ・オリベは弾きこなす事が出来ずに終ってしまいました。
〜この時のホセ・オリベです〜
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