ウルは年のわりに飄々としてる子だ。泣いたり怒ったりしたりするところを見たことがない。肉親にもそうなのだから外でもそうなのだろう。にこにこしていて周りに自分の思考を探らせないなんて、すごい子だ。そのわりに人の思考を読むのには長けているし――末恐ろしい、なあ。ウルは小さい頃、私のことを名前で呼んでいた。シフ、ってにこにこと笑いながら慈しむように名前を呼んだ。私はかわいいなあ、と思っていた。母さんのこと好きなの、と聞くと眩しそうに目を細めて笑いながら頷いた。それはきっと嘘じゃない。そうだったら今までこの関係を保てなかっただろう。必要なのは愛。ウルはそれをもらう方法を知っているだけだ。