ぼんやりとした明かりが照らす。あたたかくてやさしい光だ。さやかはからん、と音を立てるグラスを見ていた。カクテルの色が明かりに透けていて、きれいだ。カウンターに座ったふたりはマスターがどこかに行っているすきに、こっそりバーの中の明かりを調節していたりする。
「大丈夫か」
「……なによぅ、あたしなんかおかしい?」
「んー……いつもより酔ってる、って思ってな」
「そうかしら……確かに頭がいつもよりがんがんするわね。ぼうっとしてるし」
と言ってさやかはおでこを押さえた。チュチェはそんなさやかを見て笑うと、カクテルを頭にこつんと当てた。水滴が髪に付く。ひんやりとした水滴が頭の皮膚を伝って、気持ちいいと思った。
「今日はもう、帰るか。あんたももうつらいだろう」
「んー確かにつらいけどぉ……今日あんまり早く帰りたくないのよねえ。豊怒らせて出てきちゃったから」
「そうか……」
ふたりとも大分酔ったため、言葉が少しずつつまる。さやかはうーんと唸ると、伸びをした。
「そうも言ってらんないわよねえ。そろそろ帰らなきゃ、今度は心配させて怒らせちゃうわ」
「そうだな」
チュチェはそう言うと立ち上がり、勘定だ、と言って小銭をカウンターに置いた。じゃら、と音がする。バーの奥の方からマスターの声が聞こえ、さやかも席を立ちバーを後にした。
「あーなたのーゆーびわにーこっそりぃーきーすしてー」
「なんだその歌」
「知らないの、最近流行りだした歌よー。リィちゃんの。すごい気持ちわかるのよねーなんか」
「……そうか?」
「そんなもんよー、乙女心っていうのは」
チュチェとさやかは肩を組みながら歩いている。身長差が70センチ近くある二人だから、あまり形のいい肩の組み方ではなかったのだが。ネオンが薄く開いている目にぼんやりと入り、きらきらと光る。さやかは歌の続きを大きな声で歌うが、ネオン街の住人にそれらは気にも留められない。ふらつく足元を支えられながらチュチェにもたれかかり歩く。チュチェは笑うと、さやかを支える腕に力をこめ、キャンティに向かう道をゆっくりと歩く。こりゃあ豊さんに怒られても仕方ないな。そう思いながら。
やっぱりここは公式カプのチュチェとさやかで。飾らない二人が大好きです。