マクロードはソファの上で眠るさやかを見て、またしても弱った、と思った。厚着だったのがせめてもの救いで、もしこれが薄着だったら自分は何をしてたかわからないと思うと、なんていう男なんだと自分を一喝した。寝込みを襲うのは、最低だ(しかも別に自分を特別好いていないのに)。
 チュチェはこの前飲みにいったバーで、仕事で遠くに行くから、さやかを頼んだぞと言った。マクロードは少しどきりとしたが、いつものように平静を保ちおどけて、えーなんでーと言った。チュチェは小さく微笑むと、お前しか任せられないだろう、と言った。豊さんは、と聞くとあいつは家族だからな、と言った。家族じゃないから、僕の頼むのかとマクロードは思って、頼んだぞと言って頭をわしゃわしゃと撫でるチュチェに少し不満を感じた。年もそう変わらないのに、どうも子ども扱いされているなあ。やっぱり、この身長差からだろうか。およそ30センチの壁は意外と厚い。マクロードはその時のことを思い出して笑った。
 チュチェにもさやかちゃんにも僕は男として見られていないんだ。
 チュチェもさやかも、マクロードが何かするとは微塵も思っていない。だから易々とさやかを預けるし、ソファの上ですうすうと眠っていたりする。もし、ここで僕がさやかちゃんを襲ってしまったりしたら――もう二度と、しゃべったりはしてくれないんだろう。僕は今の距離感も好きだしな、と言うともうひとつのソファに座り空を仰いだ。白色の天井。
「あーあ、チュチェ、早く戻ってこいよー。君のためにさやかちゃん、僕の部屋で待ってるんだよー」
 そう独り言を言って、目を瞑った。乾いた目にまぶたは潤って感じた。





マクロード→さやかを猛烈にプッシュします。原作でのマクロードのさやかの距離感が好きです。