きっと嫌われていると思っている。散々いじめてきたし、彼女は嫌っているという態度を隠しもせず出していた。
 いじめたくていじめている訳ではないとは言えやしない。事実なのだから。しかし困っているときに真っ先に手を差し伸べてくれたのは紛れもない台湾であった。なのにいじめてしまうとは。自責の念が心の中に少しずつ積もる。

 ほう、と吐き出した白い息が鳥のように空へ上がっていく。綺麗だ。
「私ね、あんたのやり方ってだいっきらい」
 そうだな、俺も嫌いだ。
 そう心の中で言って韓国は苦笑した。台湾は人差し指で髪をくるくるといじっていた。癖なのだろうか。その台湾の顔は薄く微笑んでいるように見えた。

 逢瀬は何度目になるのだろうか。廃れた鉱山、枯渇した湖、終わった線路、さびだらけの廃工場。いつも場所は違ったが、いつも会うことが出来た。今日は枯れ果てた林であった。木に葉は無い。雪が足首が埋まるくらいに積もり、それでもまだ名残惜しいらしく降り続けている。歩くごとに気味のいい音がする。
「ねえ、やり直せたらいいなって思う?」
「さあ。やり直すって言っても50年も前になる」
 そうね。台湾はそう言ってけたけたと笑った。韓国はいつも台湾がなぜ笑うのかがわからない。
 ぼす、という音がする。どこかの木から雪が落ちたようだ。少し勢いの良くなった雪が韓国の肌に張り付く。韓国はそれを気だるそうに手の甲で拭う。
「ばか。そうやったらそこからもっと寒くなるわよ」
 そう言って台湾は韓国の頬を指先で拭う。韓国は驚いて避けそうになったのを必死に堪える。台湾の細い指が雪を拭うのを待つ。
「逢瀬なんて、」したくなかったのにな。
「、 なんていったの?」
 言う気はない。逢瀬せずとも普通に会えるようになれればいい。ただそれは何年も、何十年もかけないと叶わない夢だ。台湾の人より大きな目が捉える。韓国はそれを気にせず、ゆっくりと台湾の手を握った。台湾はそれに驚いたが、韓国の手をそっと握り返した。






前の「南には帰れない」の続きのような気持ちです。かっこいい韓国を目指してみました。