なんでお前がここにいるんだとそう問うよりも早く台湾の顔は誰が見ても機嫌がいいとは言えない顔になっていた。
 できれば会いたくなかった。同じアジアという分類には分けられるのだけれど、とても顔をあわしたくなかった。日本さんみたいにつつましくいてくれれば少しは好きになったかもしれないのにと台湾はぼんやり思った。まぁ、少しは、だから。
「……おはよ」
 台湾はそれだけ言うとさっさと身を翻らせて韓国と顔を合わせないようにした。韓国はいつものように民族衣装を着て、水汲みに向かう台湾のあとをついてきた。台湾は水桶を持って川へと向かったが、やはり韓国はその台湾の後ろに付いてくる。
「台湾ー台湾ー」
 韓国が何度もそういう。うるさいなあと台湾は思ったが、構ってられる程ヒマじゃないので放っておくことにした。 韓国は水桶を持つ台湾のあとを追いかける。
 今日は特別な日でもなんでもないし、中国がここにいるわけでもない。韓国がここに来る理由を考えては、どれも違うと首を振る。
 川に着いたので水桶を川に入れ、水を汲む。台湾がしゃがんだ隣に韓国が座る。何座ってんだこいつという目で台湾が韓国を見ると韓国はにっこりと笑って台湾の耳の上に花を差し入れる。紅色の花だ。
「……花?」
「台湾に似合うと思ってもってきたんだぜ!」
 やっぱり似合う、と韓国がいい、それを言ってからすぐどこかへ行ってしまった。台湾はそのあとを見てから、添えられた花に触る。
 そしてひとこと、はずせないじゃない、と呟いた。