犬があの人の帰りを告げるけど
きっとあの人は帰ってこない。
だって、ほら。あの人が大切にしているペンダントが、今日は朝からないのよ。
あの人は朝早く出て行ってしまったから。
だからたくさんあの人の大好物を作っても
あの人は私の作った料理を食べることはきっともう一度もない。
何度も温かいご飯をかけたお茶碗によそうけど
すぐそれは冷めてしまう。私には泣くことしかできないから。
私が朝起きるのが遅いから、
彼は私にお別れを告げて行かなかったのでしょう。
あの人はやさしい人だった。
きっと今でも私以外の誰かにやさしくしている。
犬がまたあの人の帰りを告げるけど
それはまた別の人。あの人とは違う誰か他の人。
私はあの人以外の人と契りを交わしたくはないけれど、
私は夜中の零時まで起きていられない。
だけど朝早く起きることができない。
それはきっと私にはあの人を待つということができないから。
あの人が帰ってきたとき、私は素直におかえりといえない。