彼女とはたまにご飯を食べるような仲だった。彼女は食事中にあまりしゃべらないタイプだったので、今までイギリスとわいわい言いながら食事をとっていたアメリカにとってそれはとても新鮮だった。食事を口に運ぶ仕草も全て新鮮に見えて仕方なかった。あまり見ていたら失礼だろうとは思うも、やはり見ずにはいられなかった。手も動かさずに見ていたら不意に彼女が顔をあげた。アメリカは驚いて肩を震わせるがその視線をどこすことはできなかった。
「なにみてるの?」
彼女の率直で素直な問いかけにもアメリカは上手く答えることができなかった。彼女はじっとアメリカの瞳をを見つめる。
「あ……なんだろうね?」
「わからないの?」
彼女は瞳を細めるとくすくすと笑った。彼女は優雅に笑う。野花を摘んでいる時も、川辺りで歌をうたうその声も、髪を耳にかける仕草も全てアメリカの心を掴む。とは言っても好きなわけではない。美しいな、と思うだけである。それは好きとはちょっと違う。美しいものを愛でたいと思うのは自然な行為だ。
「君はここが好きなんだね」
「ええ。でもきゅうに、どうして?」
問われるが、次は返事に困ることはなかった。彼女の瞳はまだこちらを向いたままだ。
「君がここを好きなら、僕は嬉しいからね」
意味はわからなかっただろうが、彼女は微笑んだ。