古代ギリシャは俺の手の内でいなくなってしまった。ほわり、とまるで風がそこを通り過ぎたような儚さで。両腕からどんどん重さがなくなっていくのがわかる。羽のような軽さ。重さがあったはずの彼女の体はゆっくりと水が零れ落ちるように無くなっていく。
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いなくなると思ったら急に怖くなった。抱きかかえた彼女の口元が僅かに動く。ばかね、と口の形がゆっくりと動いて、最後に微笑んで消えた。笑ったのみたの、今日が初めてじゃないか。今まで一度も俺はお前の笑顔を見たことが無かった。
薄くなっていく彼女の体が妙にリアルで、これは現実だということを思い知らされた。だめだ、俺、おまえがいなくなったら、――――
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