めずらしくセーシェルが真剣な顔をしてテーブルの向かいからぐっと身を乗り出してきたので、なんだなんだと新聞紙から顔を覗かせてそいつの顔を見る。いつもより何倍も真剣だ。セーシェルは俺の双眸をじっと力の入った目で見つめるとゆっくりと唇を開き、人差し指を立てた。耳の下あたりで結われた二つの髪がふわりと揺れる。テーブルの上においてある紅茶に髪が入りそうでひやっとした。
「イギリスさん、サンタさんは本当にいるんですよ」
 と言った。ばからしい。お前今いくつだよ。
「そうか」
 新聞紙に目を戻す。今日の天気は、曇りのち雨。出かけるには折り畳み傘を持っていきましょう。もしかしたら雨は雪になるかもしれません。ふうん。じゃあいつもより厚めのコート着てったほうがいいかもなあ。雪降ったら明日雪かきしなきゃなんねえのか、さいあくだ。
「そうかって何ですか!関心ないですね〜もっと乗ってくれてもいいじゃないですか。セーシェル、どうしてそう思うんだ?とか言っても。ぷぷ」
 セーシェルが人の声音を真似て言う。少し腹が立ったがそんなことにいちいちつっかかってたらきりがないのでやめておく。俺は呆れた顔をして見せて、さっきのセーシェルの言っていたことを一文真似して言う。
「どうしてそう思うんだ?」
「あのですね、25日の朝、枕元にプレゼントが置いてあったんですよ!これはサンタさんです!」
「……はぁ」
 自信満々に言われても、こちらとしては対処の仕様がない。



「あのさ、お前。24日の夜、一緒にいたのは誰だ?」
「……イギリスさんですけど」
「……そういうことだ」
 セーシェルはそれでも気が付かないようでえ?え?と間抜けな声を上げている。ばか、でかいヒントやったんだからさっさと気が付けよ、恥ずかしい。