日本さんは前を見ながらぽつりと、混んでいますねと呟いた。私はそれに頷いた。夜のことだった。暗くて、混んでいて、それでネオンがきらきらと朝にしようとしているような、そんな夜だった。私と日本さんは、買い物に来ていた。私がおみやげを買いたい、と言ったらここまで連れてきてくれた。私はかわいいのとか上司に見せたいのとかすごくたくさんあったから、たくさん悩んだ。日本さんにも相談に乗ってもらったし、いいのが買えた!と思ったら今すぐ空港に行かなくちゃならない時間になっていた。
 じゃあもう帰ります、ありがとうございましたと言ったら日本さんは混雑しているので迷いますよ。送っていきます、と言ってくれた。
 と言うわけで人ごみを掻き分けて空港へ向かったのですが。
 混雑しすぎて身長の低い私たちはあまり先が見れないし、遠くのネオンがぼやけて見えた。私は目を細めると空港はまだまだ先なんだなと思った。ああ あんなに悩まなければよかったな。また来れるんだから。
「……仕方ないですね、走りましょうか」
 ほら、と差し出された手に私は顔が赤くなるのがわかった。もしかして、手を繋いで走るんですか?そう思って見上げると日本さんはどうしたんですか、と聞いた。私は何でもありませんと首を振るとゆっくりと日本さんの手を握った。日本さんの手はひんやりとしていて冷たかった。ずっとポケットにいれていて温かくなった私の手とは大違いだ。